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「村上春樹の読みかた」書評 自在な読みをさせる秘密

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2012年09月02日
村上春樹の読みかた 著者:石原 千秋 出版社:平凡社 ジャンル:小説・文学

ISBN: 9784582835809
発売⽇: 2012/07/01
サイズ: 19cm/283p

村上春樹の読みかた [編]菅野昭正

 村上春樹をどう読むか。石原千秋、亀山郁夫、三浦雅士、藤井省三、加藤典洋の5氏がそれぞれの読みかたを世田谷文学館で語った連続講座を本にまとめた。
 切り口も受け止めも5者5様。三浦は「死」をキーワードに読み、藤井は『風の歌を聴け』の書き出しを魯迅の言葉と重ねる。亀山は「終わりの感覚」という点で、村上は三島由紀夫と似ているという。
 『1Q84』に続きはあるのか。「BOOK0」を待ち望む石原に対し、亀山は「BOOK4」を想像する。80編の短編を見渡して、加藤はこう評する。「稀(まれ)なほど、持続して、自分を進化させ続けてきた小説家」。自在な読みをさせる秘密がここにありそうだ。
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平凡社・1680円