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桐野夏生「緑の毒」書評 レイプされた女性たちの心の痛み

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2011年09月25日
緑の毒 (角川文庫) 著者:桐野 夏生 出版社:KADOKAWA ジャンル:一般

ISBN: 9784041019535
発売⽇: 2014/09/25
サイズ: 15cm/332p

緑の毒 [著]桐野夏生

 妻と2人で暮らす39歳の開業医・川辺康之は、希少価値が高いスニーカーなどブランドものを、こよなく愛する男だ。ところが、裏の顔は連続レイプ犯。医者の立場を利用して手に入れた薬品で女性たちを眠らせ、犯行に及ぶ。嫉妬と妄想と興奮が彼を包む。被害者たちはあるきっかけで連絡を取り合い、川辺の犯行を徐々につかんでいく。医院の経営難と人間関係、妻の浮気が絡み、川辺の周辺は騒然となっていく。
 iPhoneでのメールやツイッター、ネット投稿など情報ツール、女子会やオフ会といった現代的な現象が効果的にちりばめられ、苦労して医者になった男の邪悪な部分とレイプされた女性たちの心の痛みが鮮烈に描かれる。
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 角川書店・1470円