真藤順丈「畦と銃」書評 農村は消えても民は消えぬ
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2011年08月21日
畦と銃
著者:真藤 順丈
出版社:講談社
ジャンル:小説・文学
ISBN: 9784062170840
発売⽇:
サイズ: 20cm/325p
畦と銃 [著]真藤順丈
「○○と××」という作品の題は、例えば「灰とダイヤモンド」のように、対照的な二つが並ぶことでインパクトを生む。と、分かっていても、まさか、牧歌的な田んぼの畦道(あぜみち)にハードボイルドな銃を持ってくるとは。その驚きから物語は始まる。
舞台は人口770人の、「あくびがでそうな」御薙村。そこに、畦で仕切った世界に収まっていられない「あぜやぶり」なヤツらが生きる。農家は横暴な地権者に「百姓の百ある業のひとつめ、一は一揆だ」と蜂起。林業家も、畜産家も、また暴れる。
一人称の語り手は、時に説明なく方言を使い、展開も天衣無縫で、まさに「あぜやぶり」。農村は消えても民は消えぬとばかりの熱がこもる。(講談社・1680円)