「出版大崩壊―電子書籍の罠」書評 ブームに警鐘を鳴らす一冊
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2011年04月24日
出版大崩壊 電子書籍の罠 (文春新書)
著者:山田 順
出版社:文藝春秋
ジャンル:新書・選書・ブックレット
ISBN: 9784166607983
発売⽇:
サイズ: 18cm/253p
出版大崩壊―電子書籍の罠 [著]山田順
昨年は「電子書籍元年」と騒がれ、アップルのiPadやソニーのリーダーなど、さまざまな端末も登場した。出版不況の救世主と期待する声もある中で、著者は「電子書籍は普及していくとしても、それが紙のようにビジネスとして成立しない」「電子出版がつくる未来は幻想にすぎず、既存メディアのクビを絞めるだけ」と主張する。音楽業界、ゲーム業界、アニメ産業が衰退したことを例に挙げ、デジタル化は「失業を生むシステム」という。
光文社の元編集者とあって、価格決定権から不法コピー、著作権の問題まで細かく目配りしていて説得力がある。電子書籍ブームに乗っかろうという安易な動きに、警鐘を鳴らす一冊だ。(文春新書・840円)