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「サラリーマン誕生物語」書評 20世紀型知的労働者の苦悩

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2011年04月17日
サラリーマン誕生物語 二〇世紀モダンライフの表象文化論 著者:原 克 出版社:講談社 ジャンル:社会・時事・政治・行政

ISBN: 9784062167765
発売⽇:
サイズ: 20cm/334p

サラリーマン誕生物語 [著]原克


 サラリーマンといえば、背広、満員電車、短い昼休み、オフィスでは新しい機械にオロオロ……。近代都市に生きる「サラリーマン」のイメージの原型を昭和初期に求めてタイムトリップ。1936年の、架空の東京の貿易商社員の1日に密着する。特に当時、効率化のために次々と導入されたOA機器に焦点をあてることで、機器との格闘の悲喜こもごも、サラリーマンたちが「人間として」それらにどんな影響を受けたのかが見えてくる。科学雑誌の語り口を分析し、人間そのものも矯正して「効率化」しようとする視線があったことを浮かび上がらせた。「20世紀型知的労働者の苦悩」は、働き方の転換点にある21世紀の私たちにも無縁ではない。

 (講談社・1995円)