「なぜ経済予測は間違えるのか?」書評 「心配性のおかあちゃん」を交えてみては?
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2011年05月08日
なぜ経済予測は間違えるのか? 科学で問い直す経済学
著者:デイヴィッド・オレル
出版社:河出書房新社
ジャンル:経済
ISBN: 9784309245416
発売⽇:
サイズ: 20cm/315p
なぜ経済予測は間違えるのか? [著]デイヴィッド・オレル
大震災が起こる想定では金がかかりすぎるから、起こらないと想定しよう——福島第一原発の大事故は、原発が何より経済システムであることを見せつけた。
本書は、市場主義経済の原理的な危うさを撃つ。応用数学者である筆者によれば、市場の大変動と大地震は「べき乗則」と呼ばれる同じ系に属し、主流派経済学の想定範囲の外から、何の前触れもなく出現する。そして、この破滅的な危機をしのぐには、理詰めの効率追求よりぼんやりした幸福を願い、経済活動に女性性の導入を考えたほうが、むしろ適当と説く。確かに、「心配性のお母ちゃん」を交えて計画したら、福島原発は違う備えをしていたか。(松浦俊輔訳、河出書房新社・2520円)