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「私の人生なのに」主演・知英さん 生きる勇気をもらう意外な名言集とは

文:永井美帆、写真:有村蓮

 「原作を読みながら、この役をどうやって演じればいいのか、ずっと考えていました」
 こう話すのは、韓国出身の女優・知英(ジヨン)さん。アイドルグループ「KARA」の元メンバーで、2014年から日本を中心に女優として活動している。そんな知英さんが新体操のスター選手、金城瑞穂を演じた主演映画「私の人生なのに」が公開される。

 原作は、漫画原作やゲームシナリオを手がけてきた東きゆうの本格小説デビュー作。将来を期待されていた瑞穂は練習中に脊髄梗塞(せきずいこうそく)で倒れ、車椅子での生活を余儀なくされる。「ある日突然、夢を絶たれた絶望感や悲しみ、家族や仲間への思い、どれも私の経験では想像できない世界でした」

 脚本も手がけた原桂之介監督のすすめもあり、撮影前、この病気を抱えた人と話す機会を持った。「中には自殺を考えたり、遺書を書いたりしたという方もいました。『今でも病気になったことが信じられない』という言葉が忘れられません。まるでドキュメンタリーを見ているみたいだけど、これが現実なんだなって。そんな話を聞きながら、だんだんと瑞穂が出来ていった感じです」。撮影数カ月前から始めた新体操や車椅子の練習もあって、「私の中に瑞穂がすっと入って来ました」と話す。

 絶望にくれていた瑞穂は、ストリートミュージシャンの幼なじみ、柏原淳之介(稲葉友)と数年ぶりに再会。ギターを手にすることで、新たな夢を抱くようになる。劇中で瑞穂が歌う主題歌「涙の理由」からは絶望を乗り越え、前に進もうとする気持ちが伝わってくる。

 撮影前に手渡された原作は、1カ月かけてじっくりと読んだという。「平仮名や簡単な漢字は分かるけど、病気についての専門用語はまだ難しいですね。周りの人に聞きながら頑張って読みました」

©2018「私の人生なのに」フィルムパートナーズ
©2018「私の人生なのに」フィルムパートナーズ

 何回か改訂を重ねた映画の脚本は、原作と異なった描かれ方がされている。原作では瑞穂が車椅子生活になった原因は事故による脊髄損傷だったが、映画では脊髄梗塞になった。「新体操があって、ギターがあって、障害を持つ女の子っていう本質は変わらなかったから。私は監督が描きたかった瑞穂を演じることに集中しました」。原監督の作品への出演は今回が2回目。お互い信頼も厚い。

 「監督は全部私に任せてくれるので、やりやすかったです。脚本も『私に当てはめて書いてくれたのかな』って思うくらい。瑞穂は気が強いところがあって、淳之介に対して結構ぶっきらぼうな言葉で話すんですけど、普段の私もそう(笑)。私を知っている人が映画を見たら『これ、知英じゃん!』って言うかもしれないですね」

 前作「レオン」で共演した竹中直人に「韓国人ってことを忘れちゃう」と言わしめたほど、ナチュラルな日本語を話す知英さん。「普段、日本語の本は読みますか?」と尋ねると、くまのプーさんの名言を集めた『プーさんと仲間たち そのままでいこう』(PHP研究所編、2014年、現在は絶版)を移動用の車からわざわざ持ってきてくれた。「あまり読まないんですけど、この本は特別。2年くらい前に知人からもらって、いつも車の中に置いています。『大事なのは、自分であること』から始まって、プーさんの名言がいくつも書かれていて。日本語の勉強にもなるんです」とページをめくった。

 類書が今年に入って韓国でも相次いで出版されていて、「元気になれる」と若い女性の間で人気を集めている。「小さい頃からプーさんは好きだったけど、その理由が分かりました。前向きなんです。時々読み返しては、プーさんの哲学に勇気をもらっています」