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増田明美さんが好きな「朝ドラには働く女子の本音が詰まってる」 

ますだ・あけみ 64年生まれ。スポーツジャーナリスト、大阪芸術大教授。朝ドラ「ひよっこ」で語りを務めた。

バッサリ斬るコメントが痛快

 女子の本音とはいったいなんだろう。同級生が恋愛やオシャレの話題で盛り上がっていた青春時代、汗にまみれながら走っていた私は“女子”の感覚を持ち合わせていないと感じていた。周りで「新しいリップ試した?」なんて話している女子を、別世界の人だと思っていた。
 そんな私がNHKの朝ドラを見るようになったのは、主人公の生き方に女性らしさや女性ならでは、という部分を学ぶためだったんだ、と、この本で気付かされた。これまで何げなく見ていた朝ドラ。そこに“詳しすぎる解説”を加えてくれたから。例えば「カーネーション」で、主人公の糸子が男の子に喧嘩(けんか)を挑むエピソードを取り上げる。家で糸子は、男と張り合うなと父親に殴り飛ばされる。著者は「糸子は女に生まれた不運を嘆く」と解説する。そうそう、あのエピソードで「女だから」できないことが多い世の中に疑問を持つ糸子の性格や生き様を表現していたんだと納得。
 新聞記者、雑誌の編集長を経た著者だからこそ、男性社会の中で奮闘する女子の気持ちが痛いほど分かるのだろう。しかも歯にきぬ着せずに「ワンパターン」「安っぽさ爆発」と、ダメな朝ドラをバッサリ斬っていくのも痛快。朝ドラファンでなくとも、女子は「うん、うん」、男子は「へぇ~、女子ってそうなんだ」と、読んでいて首が縦にばかり動くと思う。(寄稿)=朝日新聞2018年7月7日掲載