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山崎裕二「先にしくじる」 未来の失敗に備え その芽をつぶす

『先にしくじる』 [著]山崎裕二

 近年、翻訳もののビジネス書で「プレモータム・シンキング」に関する記述をよく目にする。米国の病院や軍など「絶対に失敗が許されない」現場で使われる手法だが、プロジェクト・マネジメントの方法論として応用する企業が増えているとか。本書は、その日本向け解説書にあたる。
 プレモータム・シンキングの要諦は、先回りして未来の失敗に備えること。プロジェクトが失敗したと仮定して、その原因を分析。水面下にある問題点をあぶり出し、失敗の芽をつぶすのだ。
 そもそも我々が失敗するのは、人間が生来持つ「バイアスの罠」にはまるからだという。課題を先延ばしにする、根拠のない自信を持つといった「七つの罠」から逃れるために、このメソッドを活用せよ、と著者は説く。
 そういえば、某人気ドラマの女性外科医も、「私、失敗しないので」という強気な態度とは裏腹に、失敗を想定した綿密な準備をしていた。
 具体的なプロジェクトの進め方や検証方法、ツールの活用法を盛り込んだ実践的な内容。ベンチャー企業の経営に失敗した経験から〝失敗しないための方法論〟に心酔したという著者の告白が、本書に説得力を与えている。=朝日新聞2018年7月14日掲載