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清原果耶(かや)さんインタビュー 「透明なゆりかご」演じて気づいた命のあり方 

文:渡辺鮎美、写真:斉藤順子

 舞台は町の小さな産婦人科医院。そこは「命と出会い、命を見送る」場所だった。中絶や死産など、医療ドラマでも取り上げられることの少ない、小さな命の光と影を描いた連続テレビドラマ「透明なゆりかご」が、7月20日からNHKで始まる。

 高校の准看護学科に通う17歳の主人公、青田アオイが病院を訪れるところから物語は始まる。演じるのは清原果耶さん。2014年にデビューし、NHK連続テレビ小説「あさが来た」や映画「3月のライオン」、「ちはやふる 結び」など近年の話題作に次々と出演。本作でドラマ初主演を果たした。「軽い題材ではないですし、原作の世界を崩さないようにと責任を感じました」

 その原作とは、沖田×華(ばっか)の漫画『透明なゆりかご 産婦人科医院看護師見習い日記』(講談社)。准看護師の養成学科にいた高校時代、戴帽(たいぼう)式も済ませていない沖田自身が、看護助手としてアルバイトした産婦人科医院での体験が元になっている。

 見習いのため、頭にかぶるのはナースキャップではなく三角巾。喜びがあふれているはずの分娩(ぶんべん)室で初めて立ち会ったのは中絶手術だった。「日本の死亡原因の本当の第1位はアウス(人工妊娠中絶)だ」とつぶやく院長に、手術後の胎児の処置も任された。臨月まで一度も診察を受けずに医院に現れた女性は、不倫相手の子どもを出産した直後に失踪してしまう。

 様々な「命のあり方」が、軽やかなタッチとコミカルな表現を交えて描かれる。親に打ち明けられないまま出産に至った高校生や赤ん坊の置き去り、幼い少女が受けた性的虐待といった問題にも触れ、ドラマ化には「あの漫画が?」という声さえ聞かれたという。

 清原さんは出演が決まると最新刊の6巻まで一気に読んだ。「初めて妊娠や出産、産婦人科のこと、命の尊さについて考えました。現実に起きていることなのだと、泣きながら読みました」と振り返り、「台本をもらう前に原作を読んだおかげで、ドラマの世界がより鮮やかに捉えられた」と話す。

 原作者の沖田からは、清原さんの演技を見て「(アルバイトしていた)当時を思い出した」と言葉をかけられたという。「沖田さんも、学生時代に自然に感じたことを表現したそうです。『深く考えず、ありのままで大丈夫』とアドバイスされて、気持ちが楽になりました」

 不器用だが素直で独特の感性を持つアオイの役柄には親近感を寄せる。「いつでもまっすぐ。演じていて楽しいです」と演技への手応えも語る。撮影開始前は看護学校を訪ね、新生児の着替えや沐浴(もくよく)の仕方などについて学んだ。「撮影現場で妊婦さんの背中をさすって、と言われても背中のどこなのかわからなくて。医療指導の先生に何でも聞いて、細かく教えてもらっています。熱意、という意味ではアオイちゃんと重なるかも」と笑った。

 アオイを支えるのは院長の産婦人科医・由比(瀬戸康史)や看護師の望月(水川あさみ)、看護師長の榊(原田美枝子)ら、厳しくも優しい人生の先輩たち。そしてたくさんの新生児たちもドラマに参加した。登場する赤ちゃんはみな生後2週間以内と、本当に生まれたばかり。作品の趣旨に賛同した父母らが撮影協力の依頼に応じた。「連れて来てくださったお母さん方にも『母の偉大さ』を感じます」。全10回。自然光にこだわって撮影したという、やわらかい世界観とともに、成長していくアオイの姿に注目したい。

 日々、台本や原作に向き合う機会の多い役者の仕事。普段の読書について尋ねると、最近気に入っているという『あさ/朝』『ゆう/夕』(いずれも詩と文・谷川俊太郎、写真・吉村和敏、2004年、アリス館)を紹介してくれた。本を右へめくると詩集、左へめくると絵本として楽しめる、ビジュアルブックだ。谷川の代表作の一つでもある「朝のリレー」や書き下ろしの「あさ」が、写真家・吉村の生き生きとした風景写真と見事に融合している。「『あさ/朝』の中の『朝のかたち』という詩が一番好きです。言葉が美しいって本当にすてきですよね。朝読んで、その日の気持ちのベースを作ったり、寝る前に読んでリフレッシュしたりしています」