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「平和を考える 戦争遺産図鑑」 モノは風化しても記憶は風化させない

右上、ソロモン諸島ガダルカナル島の子どもたちが米軍の上陸水陸両用車で遊ぶ写真は、編集担当の杉村浩志さんの印象に残った一枚

 8月15日は終戦記念日。ぜひ手に取ってもらいたいのが、現存する国内外の戦争遺産を収録した「平和を考える 戦争遺産図鑑」です。

 写真家の安島太佳由さんが20年に渡って撮影した戦争遺産の数々は、アジア・太平洋戦争の戦禍をくぐり抜けた、ある意味生き証人のような存在。本書では、それらの「ありのままの現在の姿」を見ることができます。写真だけでなく、地図や年表、コラムなども添えられているので、アジア・太平洋戦争の歴史を学ぶのにもおすすめです。

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 戦争を体験していない多くの読者に向けての工夫も細やか。「御真影」や「八紘一宇」など、今ではあまり耳なじみのない戦争関連の語句もしっかり解説。「著者、編集者ともに戦後生まれ。写真のキャプションも偏ったものにならないよう、そして単なる情報の羅列のように淡々としたものにならないよう留意しました」と編集担当の杉村浩志さんは振り返ります。

 広島から始まり、旧満州の侵華日軍第七三一部隊罪証陳列館で終わるという構成には、ある思いがあるとのこと。「この対比は、被害者としての側面と加害者としての側面の双方を考えるきっかけにしてほしいという願いを込めています」

 この夏、一冊の図鑑を手に、戦争のこと、平和のことを改めて考えてみてはいかがでしょうか。