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なぜあんなに細長いのか

評者: 椹木野衣 / 朝⽇新聞掲載:2018年08月18日
ジャコメッティ彫刻と絵画 著者:デイヴィッド・シルヴェスター 出版社:みすず書房 ジャンル:芸術・アート

ISBN: 9784622079798
発売⽇: 2018/06/23
サイズ: 22cm/270p

ジャコメッティの彫刻はなぜかくも細いのか−。矢内原伊作と同様にモデルとなった美術評論家が「全身芸術家」に肉迫した金字塔的エッセイ。1964年9月にBBCラジオで放送された…

ジャコメッティ 彫刻と絵画 [著]デイヴィッド・シルヴェスター

 ジャコメッティの作る人物像は、なぜあんなに細長いのか。誰しもが抱く疑問だろう。作家の英国での大回顧展を組織した著者は、アトリエで実際にモデルを務めながら、この秘密に迫る言葉を、まさにその像が生み出されつつある現場から紡ぎ出していった。
 だが、何度か刊行の機会がありながら、本書がようやく世に出たのは1994年のことだった。初めてジャコメッティに出会った48年から66年の作家の死を経てなお、この謎について長く考え続けたのだ。
 私には本書の叙述がジャコメッティの彫刻そのもののように思えて仕方がない。著者はその異様なほどの細長さが、モデルから受け取った最初の印象に徹底して「似る」よう削ぎ落とした結果だと書いている。
 著者もまた、ジャコメッティの作品に可能な限り「似る」ことを念頭に、批評する対象の原点まで絶えず立ち戻りながら、かくも長い時を「細長く」書き継いだのではあるまいか。