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「ブラックボランティア」など、今週注目の新書4選(朝日新聞2018年9月1日掲載)

『ブラックボランティア』

 酷暑の中での開催が予想される東京五輪に、中高生を含む膨大なボランティアの動員が見込まれている。薬剤師など専門性の高い分野を含め無償だ。しかし、自発性・非営利性・公共性を特徴とするボランティアに、「無償」の意味はない。広告会社出身の著者は、五輪は多数のスポンサー企業をもつ営利活動の場であり、「感動」や「やりがい」を餌にした無償ボランティア集めは「搾取」だと批判。監視すべきメディアにも厳しい目を向ける。
本間龍著 角川新書・864円

『経済の不都合な話』

 現在の主流派経済学は、人間が理性的であることを前提にしてきたが、人間は常に合理的でいられるわけではない。いま世界中で理性よりも感情が優位に立ち、経営学やマーケティングの理論が通用しなくなっている。神経科学や行動経済学で企業行動を読み解く著者は、現実の私たちは「ある程度の理性を持ったサル」なのだ、と説く。
★ルディー和子著  日経プレミアシリーズ・918円

『英語教育幻想』

 グローバル人材育成を掲げる英語教育政策の前提には、英語は国際共通語として「世界中だれとでも意思疎通できる」「社会的・経済的成功をもたらす」といった思い込みがある。応用言語学が専門の著者は、一元的な英語が存在しないことや言語における受信と発信の違い、早期教育の問題点などを説明しながら、日本における英語教育を検証する必要を力説する。
★久保田竜子著 ちくま新書・886円

『「がん」はなぜできるのか』

 がんの発生要因から免疫のかいくぐり方、再発や転移のメカニズムなどを、現状の治療法や診断法とあわせて説明。がん予防薬実現の可能性、遺伝子解析によって診断や治療を行うゲノム医療など、最新の研究成果で解明されていることと未解決の問題を正しく理解することで、がん克服への展望が見えてくる。
★国立がん研究センター研究所編 講談社ブルーバックス・1188円