1. HOME
  2. コラム
  3. To The Beer Bar
  4. To The Beer Bar~ちょいのみ親父の探訪記~ 第13回 四条烏丸(京都)

To The Beer Bar~ちょいのみ親父の探訪記~ 第13回 四条烏丸(京都)

文・イラスト:藤原ヒロユキ
文・イラスト:藤原ヒロユキ

Beer House CRAFT MAN

 京都市内には「ウナギの寝床」と呼ばれる建物が多い。間口が狭く奥行きが長い敷地に建てられた物件のことである。
 京都では豊臣秀吉の時代から、税金が間口の広さによって決められていたため、奥に細く長い家が建てられるようになったと言われている。現在、このように細長い敷地に建った伝統的な民家は「京町家」と呼ばれ、人気が高まっていると聞く。『京町家拝見(SUIKO BOOKS)』は、伝統的な京町家を美しい写真で紹介している本で、そのページをめくるごとに京都の風情を感じることが出来る。

 「Beer House CRAFT MAN」のしつらえは今風のビアバーだが、まさに「ウナギの寝床」と言っていい細長さだ。間口に対して奥行きが広いお店である。

 店に入るとまずはスタンディングのカウンターがあり、壁にはドラフトビールを注ぐタップが25本並んでいる。一瞬「このサイズの店にしては多いのでは?」と思うことだろうが、なんせ「ウナギの寝床」である。1階の奥には着席スタイルのカウンターがあり、2階と3階にはテーブル席やソファー席もある。キャパシティーは40席以上だ。25本のタップもうなずける。

 スタンディングカウンターに陣取り、なにを飲もうかと考える。ドラフトビールのほとんどが国産のクラフトビールだ。
 ここはやはり、地元京都のクラフトビールを飲みたい。

 まずは「黄桜京都麦酒」のケルシュを一杯。
 ケルシュはドイツのケルン生まれのビアスタイルで、淡い黄金色に純白の泡が美しい。フルーティーな香りを醸しだすエール酵母を使い、低い温度で熟成させるのですっきりとした味わいに仕上がるビールである。シャルドネのような香りとシャープな飲み口が人気だ。スイスイと喉を通っていく。

 2杯目は同じく「黄桜京都麦酒」が醸造するアルトを選んだ。
 こちらはドイツのデュッセルドルフ発祥のビアスタイルである。アルトもケルシュと同じく、エール酵母を低温で熟成させるが、色は濃いめの銅色でケルシュとはかなり違った味わいだ。モルトのこうばしさとそれを支えるホップの苦味を感じることが出来る。

 ケルシュが生まれたケルンとアルトが生まれたデュッセルドルフは、電車で30分程度の距離しか離れていないのに、「仲が悪い都市」として有名である。ドイツは、各都市や地域の郷土愛が強いため、他の地域に対するライバル心が強いが、ケルンvsデュッセルドルフに関してはことさらである。デュッセルドルフで「ケルシュって美味しいよね」なんて言おうものなら袋叩きにあう可能性がある。逆もまた真なりだ。以前、ある知人(日本人)がケルンのビアハウスで、冗談半分に「アルトください」とウェイターに言ったら「ないよ」と立ち去られたあとしばらく無視されたなんて話を聞いたことがある。
 もちろんここはケルンからもデュッセルドルフからも遠く離れた日本の京都だ。臆することなくケルシュもアルトも楽しむことが出来る。

 しばらくすると、観光客とおぼしき外国人が数人やってきてカウンターで飲み始めた。日本語の「ごめんなさい」と「すいません」の使い分けが、難しいと語っている。
 ビールを頼む時は「ごめんなさい、ビールください」か「すいません、ビールください」か? と訊かれたので、「そこは、『すいません』やね。でも、ここは関西なのでKansai弁の『すんません』が自然かなぁ」なんて(笑)。

 郷に入れば郷に従え。外国人観光客が口々に「Su-n-masen」と練習し始めた。あー、なんか変なこと教えちゃったかなぁ……。ここはケルンでもデュッセルドルフでもないので、そこまで地元にこだわることはないし、「すんません」はどちらかというと大阪っぽいかも。京都の人は大阪と同じにされるのが好きじゃないし……。あっ! これってケルンvsデュッセルドルフならぬ、京都vs大阪? 「Kyoto弁は『すんまへん』って感じかなぁ」と教え直すと、みんな「Su-n-mahen」ってつぶやき始めたので、なんだかおかしくなって笑ってしまった。
 京都は国際的な観光都市なんだなぁとしみじみ思いながら、さて、次はどのJapanese Craft Beerを頂くとするか?  

 四条烏丸の「Beer House CRAFT MAN」。
 本当に、いい店だ。また訪れたくなる。