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To The Beer Bar~ちょいのみ親父の探訪記~ 第14回 神田(東京)

文・イラスト:藤原ヒロユキ
文・イラスト:藤原ヒロユキ

常陸野ブルーイング・ラボ マーチエキュート神田万世橋店

 常陸野ネストビールは、世界で最も有名な日本のクラフトビールだ。世界50か国以上に輸出されている。
 サンフランシスコと上海には直営レストランもあり、ニューヨークではネストビールのシンボル〝フクロウ〟マークがついた大型トラックが走り回っている。

 常陸野ネストビールを造る木内酒造は、茨城県那珂市鴻巣に江戸時代(文政6年:1823年)から続く日本酒の蔵元だ。
 そんな木内酒造がビール造りを始めたのは1996年。
 常陸野ネストビールのウェブサイトでその歴史(ビールづくりの歩み)を検索すると、カナダから輸入した醸造設備を社員4名が手作業で組み立てたところからスタートしている。JIS規格とは違う機材のためホースのコネクターが合わなかったり、英語のマニュアルに悪戦苦闘しながらの船出ではあったものの、1998年には「ワールドビアカップ」でエキストラ・ハイ(XH)が銀賞、バイツェンが銅賞を受賞し、世界にその名をとどろかせた。

 ちなみに、この「ワールドビアカップ:WBC」は2年に一度アメリカで開かれる世界最大のビアコンペティションで、2018年の場合は、66か国から8234銘柄のビールがエントリーしている。私も審査員として参加しているが、その規模の大きさには毎回驚かされる。各部門から選出される金銀銅賞はそれぞれ1つで、まさに「ビール界のオリンピック」と呼ばれる大会だ。
 常陸野ネストビールは2000年と2004年(ともにホワイトエール)、2006年(ジャパニーズ・クラシックエール)、2008年(エスプレッソスタウト)とWBCで連続受賞、他にもイギリス、ドイツ、ベルギー、オーストラリアなど国際的なビアコンペティションで数々の受賞を果たしている。

 常陸野ネストビールの素晴らしさは、「世界的なビールコンペで受賞歴が多い」というだけではなく、新たな挑戦を続けていることである。「欧米のビールを模倣する」のではなく、日本ならではのビールを造り、世界に発信しているのだ。
 赤米を使った「レッドライスエール」や杉桶で仕込んだ「ジャパニーズ・クラシックエール」、日本生まれの大麦“金子ゴールデン”と日本で育種されたホップ“ソラチエース”を使った「ニッポニア」、米麹と柚子を使った「セゾン・ドゥ・ジャポン」などが海外でも人気である。

 そんなネストのチャレンジスピリッツが体感できるのが「常陸野ブルーイング・ラボ マーチエキュート神田万世橋店」だ。ラボは「Laboratory:ラボラトリー:研究所」の意味である。
 店内には麦芽やホップのアロマを確認できるサンプルがあり、入り口にある釜で実際にビールの麦汁製造体験をすることもできる。まさに、研究所だ。

 さらに特筆するべきことは「常陸野ブルーイング・ラボ マーチエキュート神田万世橋店」のある場所が、東京駅よりも先にできた万世橋駅の跡地だということである。
 『神田万世橋まち図鑑』によると、大正元年から万世橋駅は中央線のターミナルステーションで、東京の中心だったとのことだ。「常陸野ブルーイング・ラボ マーチエキュート神田万世橋店」の一部には当時の赤レンガのアーチが残っている。

 その昔、東京の始発駅だった万世橋駅。
 その歴史を感じる空間で、世界に羽ばたく日本のクラフトビールを飲む。時空を超える味がするのは、ここがラボに他ならないからだ。

 万世橋の「常陸野ブルーイング・ラボ」。
 本当に、いい店だ。また訪れたくなる。