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To The Beer Bar~ちょいのみ親父の探訪記~ 第15回 丸の内(東京)

文・イラスト:藤原ヒロユキ

BBCアントワープセントラル

 丸の内の「Belgian Brasserie Court Antwerp Central:ベルジアン ブラッスリー コート アントワープ セントラル」はベルギー以上にベルギーっぽい。  
 “1920年代のベルギーのビアカフェ”を再現するため、店内の家具や調度品、壁板や床材まですべてをベルギーから輸入している。本物の本物である。

 「ここはベルギーか!?」と思うのは店の雰囲気だけではない。
 「BBCアントワープセントラル」はベルギービールと本格的なサービングテクニックで、ベルギー気分を体験させてくれる。

 ベルギーは、いい意味で「ヨーロッパの田舎」であり続けたため、伝統的なビールスタイルが数多く残されている。酸味の強いランビック、コリアンダーシードやオレンジピールが使われているホワイトエール、アルコール度数が10%以上のストロングエールなどが村の小さな醸造所や修道院で中世の時代から造り続けられているのだ。
 そんな多種多彩なベルギービールは2016年にユネスコの無形文化遺産に登録されたが、その魅力を1990年代に再発見し、世界中のビール好きに紹介したのは故・マイケル・ジャクソンに他ならない。「Michael Jackson's Great Beers of Belgium」という世界的なベストセラーのおかげでベルギービールが見直されたと言っても過言ではない。

 マイケル・ジャクソンと言えば、King of Popと呼ばれた世界的な歌手を思い出す人がほとんどだが、私達ビール好きにとってのマイケル・ジャクソンは「ちょっと太ったイギリス人のビアライター」である。自ら“ビアハンター”と名乗った彼はビールを紹介する本を数多く書いていて、日本でも『世界のビール案内』『世界の一流ビール500』『世界ビール大全―1700種以上を全試飲』といった本が翻訳されている。

 「BBCアントワープセントラル」に並ぶビールはすべてベルギービールである。最大10種類のドラフトビールと60種類近いボトルコレクションが揃っている。どれから飲もうかと迷ってしまうが、私の場合はまずドラフトからスタートすることにしている。できれば、カウンター席に陣取って。
 と言うのも、「BBCアントワープセントラル」ではステラアルトワ・ドラフトマスターズの日本チャンピオンやその大会の出場者がビールを注いでいるのだ。
 ステラアルトワ・ドラフトマスターとは、ビールのサービングテクニックを競う世界的な大会で、「Belgian Brasserie Court」の各店舗(BBCはアントワープセントラル以外にも銀座の「アントワープシックス」や新宿の「ブルージュ」、大阪の「バレル」などの店舗がある)のメンバーが多数チャンピオンに輝いている。
 グラスを洗い、ビールを注ぎ、泡の先端をナイフでサッと切るという一連の動きは実に華麗である。この所作を見逃す手はない。目の前で観るためにカウンター席を選ぶこととなるのだ。

 「BBCアントワープセントラル」は料理も素晴らしい。舌の肥えた方をお誘いする際は、「Belgian Brasserie Court」系列のお店を選ぶことにしている。
 フランスとドイツに接するベルギーの料理は、『フランス料理のクオリティーがドイツ料理のボリュームで』と称される。ミシュランの三ツ星を取るレストランの数もヨーロッパではトップクラスの美食大国である。
 ベルギービールとベルギー料理を合わせながら、極上の時間を過ごす。

 まずは、軽く「フリッツ(ベルギーのフライドポテト)」をクリーンな喉ごしの「ステラ・アルトワ」と合わせる。フライドポテトはベルギー発祥の料理で、マヨネーズで食べるのがベルギー流である。
 続いては「ムール貝のキャセロール蒸し」に「ヒューガルデン・ホワイト」や酸味のしっかりした「ブーン・グーズ」を。
 「トマトクルヴェット(トマトと小海老のサラダ)」にはホップの苦味と香りがキリッと効いた「シメイ・ホワイト」を合わせ、「カルボナード・フラマンド(牛ほほ肉のベルギービール煮込み)」はモルトのこうばしさが魅力の「レフブラウン」とともに楽しむ。
デザートの「ベルギーワッフル」に進んだ際は、アルコール度数11.3%の「ロシュフォール10」でまったりしたいものだ。

 そして食後にもう一杯。「BBCアントワープセントラル」をはじめ、数々の素晴らしいレストランを作ってくれ、日本にベルギービールを広めてくれた故・福政惠子社長を偲んで「ドゥシャス・デ・ブルゴーニュ」を一本開けて献杯したい。ローズピンクの美しいビールは、凛とした社長の姿を思い出させる。「かっこいいい女性」を絵にかいたような方だったなぁ。  

 丸の内の「BBCアントワープセントラル」。
 本当に、いい店だ。また訪れたくなる。