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後悔の連続の人生と向きあって生きる 有村架純さん主演「コーヒーが冷めないうちに」

写真:山本哲也、スタイリスト:瀬川結美子、ヘアメイク:尾曲いずみ(STORM inc.)

 「あのときこうすればよかった」、「あんなこと言わなければよかった」。そんな後悔は、きっと誰にでもあると思います。

 私が主演した映画『コーヒーが冷めないうちに』は、「もしも、あの時に戻れたら……」と悔いが残る人たちが、一瞬だけ過去に戻って会いたい人に再会する物語。登場するのは、恋人、夫婦、姉妹、親子の4組です。私が特に胸を打たれたのは、若年性アルツハイマーの妻を介護する夫が昔の妻に会いに行くエピソード。自分のことを忘れられても妻と一緒にいたいと思う、夫の愛情の深さにぐっときました。

 この作品には、亡くなってしまった家族に対する後悔を抱える人も出てきます。私も実家がある関西で大好きだった祖母が亡くなったとき、もっとお見舞いに行けばよかったと思いました。当時は、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」の撮影中で、祖母も楽しみにしてくれていたので、ドラマが始まる前に亡くなってしまったのが本当に残念でした。

 また、私にとっては母の存在があまりにも大きいので、「遠く離れた母にもし何かあったらどうしよう?」と考えると心配が尽きません。子どもの頃の私は頑固で、いつも母から「あんたは言い出したら聞かへんからうるさい」って言われていたんです(笑)。でも、小学4年生の時に両親が離婚してから、女手ひとつで私と姉を育ててくれた母の姿を見て、自分のことだけじゃなく周りのことも考えるようになりました。末っ子の甘えん坊で好き放題していた私が、この仕事を頑張ってこられたのも母のおかげです。

(C)2018「コーヒーが冷めないうちに」製作委員会 『コーヒーが冷めないうちに』全国東宝系劇場にて公開中
(C)2018「コーヒーが冷めないうちに」製作委員会 『コーヒーが冷めないうちに』全国東宝系劇場にて公開中

 そういうことを素直に伝えられるようになったのは、上京して母の存在のありがたみに気がついてから。一緒に住んでいた頃は照れくさくて言えなかったけど、二十歳になった節目に、「お母さんのおかげでここまでやってこられたよ」と話をしました。そしたら母も、「あなたたちがいなかったら、お母さんもここまで頑張れなかった」って。

 今でも母とは言いたいことを言い合える仲ですが、それはお互い無償の愛を注げるほど深い絆で結ばれているからだと思います。もちろん、家族に限らず自分にとって大切な人には素直でいたいし、嘘をついたりごまかしたりしたくない。この映画は、そんな人間のあるべき姿に改めて気づかせてくれた作品でもありました。

 一方で、人間って完璧にはなれなくて、その日の自分に満足できないから、明日も頑張ろうって思えるんじゃないかな?ということも考えました。人間関係に限らず、「あと5分早く起きればよかった」とか「食べ過ぎちゃった」とか、日々の些細なことを含めれば、人生って後悔の連続だから。

 特に自分に自信がない人ほど後悔しがちだけれど、以前、「自信がないのは、向上心があるからだよ」と言ってくれた人がいて、すごく素敵な発想だなと思ったんです。そう考えると、後悔は悪いことだと言い切れないところもあるんですよね。

 大事なことは、大切な人はもちろん、お世話になっている人たちに迷惑をかけず、素直に向きあうこと。そして、とにかく仕事に一生懸命向かっていくこと。そうすれば必ず味方になってくれる人がいるし、何か後悔することがあっても、明日また頑張ろう!と思える。私自身、そう実感しています。

(取材・文/樺山美夏)

原作者 川口俊和さんから

 映画を見終わって、三十代の時に一週間に二百円しか使えなかった頃があったのを思い出した。あの日から考えてこの映画化はまさに奇跡。映画化への道のりを思うと、エンドロールの川口俊和の名前の後ろには全国の書店員の皆様一人一人のお名前が連なっているのだと感じました。