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To The Beer Bar~ちょいのみ親父の探訪記~ 第16回 桜木町(横浜)

文・イラスト:藤原ヒロユキ
文・イラスト:藤原ヒロユキ

サクラタップス

 横浜はなんかちょっとズルイ。
 横浜という言葉には、えも言えぬ「カッコよさ」がある。

 海があるからか? いやいや、東京や大阪にだって海はある。
 港町だからか? そこはなんとなくうなずける。レンガ作りの倉庫や洋館、中華街や外国人墓地があってなんだか妙にバタ臭い。バタ臭いって死語か? ま、異国情緒とでも言えばいいのか? 

 しかし、ひとくちに「横浜」と言っても、エリアによって私のイメージは若干異なる。横浜駅周辺はショッピングモール、関内は野球場と横浜市庁舎、みなとみらいから大さん橋を経て山下公園は観光スポット。ま、私の個人的な思い込みだが……(苦笑)。

 そして、桜木町は、「ターミナルステーション」のイメージだ。
 日本では「ターミナルステーション」という言葉を「多くの路線が乗り入れている巨大な駅」として使われるが、本来の意味は「終着駅」である。
 私が大阪から東京に引っ越してきた30数年前、東横線の終着駅は桜木町だった。渋谷から電車に乗り、横浜にたどり着く終着駅が桜木町だ。そのイメージが今もなお私には強く残っている。

 さらに歴史を振り返ると、桜木町は1872(明治5)年に、日本で初めて鉄道が開通した際の終点横浜駅だったとのことだ。1915(大正4)年に、今の横浜駅にその名を譲るまで、桜木町駅が横浜駅だったのだ。
 野ばら文庫の『鉄道唱歌 明治33年の汽笛一声から』で唄われている、「汽笛一声新橋を~」から続く5番の歌詞「鶴見神奈川あとにして ゆけば横濱ステーシヨン」は、桜木町のことなのである。

 そんな桜木町から歩くこと3分。「サクラタップス」は、野毛地区の入り口ともいえる花咲町にある。最寄り駅が桜木町で、町名が花咲町で、店名がサクラタップス。この上なく美しい。
 スタンディング形式のカウンターは、6~7名ほどでいっぱいになる長さで、テーブルは4つ。15~16名も入れば満員になるというコンパクトな店だが、不思議と「狭っ苦しさ」を感じない。それは、落ち着いた雰囲気とほどよいライティングと美味しいビールのなせる業に違いない。
 注ぎ口まで冷却できている8本のタップから、フレッシュなクラフトビールが注がれる。グラスに滴り落ちる最後の一瞬まで温度管理されているビールは、実に綺麗な味わいだ。

 銘柄は、日本のクラフトビールが多く、メニューに樽の開栓日が記されているのも面白い。なお、メニュー上の価格はテーブル席での値段で、スタンディングだとラージ200円、ミディアム100円、スモール50円引きである。もともとスタンディング好きの私にとっては嬉しい限りだ(笑)。

 料理も、野菜のピクルス、マヨネーズを使わないポテトサラダ、自家製スモークナッツ、豚のリエット、鶏と野菜の鉄串グリルなどが300円~500円とリーズナブルである。
 肉や魚は産地をメニューごとに表示し、野菜はすべて国産を使用(海外産を使用の場合はメニューに原産国を明記)、塩は天然塩のみを使用している。食の安全を一番に考えてのことである。

 「サクラタップス」はビールに加えてコーヒーにも愛情を注いでいて、クラフトビールや食事やコーヒーの香りを阻害するタバコはNGである。当然、店内は禁煙。タバコを吸わない私にとって、嬉しい店だ。

 店内に流れる音楽も素敵だ。専属の音楽担当者が選曲しているとのことである。
 毎月のBGMプレイリストやアーティスト情報をフェイスブック(https://www.facebook.com/groups/382327808766192/)で公開し、YouTubeに「Sakura Taps Music」(https://www.youtube.com/channel/UC8iW1J03VTXz0SSqJvp1rJA)というチャンネルまで作っちゃっている。
 「サクラタップス」は、音楽までもがビールの肴なのだ。これが実にカッコよく、大人で都会的なサウンドなのである。音楽とビールのペアリングまで洒落ている。
 こーゆーところが、やっぱ「横浜」なんだよなぁ。
 なんかちょっとズルイんだよなぁ(笑)。

 横浜の「サクラタップス」。
 本当に、いい店だ。また訪れたくなる。