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「ダイヤのA」沢村のハートの強さが爽快! ウィルチェアーラグビー・今井友明さん(前編)

文:熊坂麻美、写真:有村蓮

高校野球ならではのドラマがつまってる

――たくさんの愛読マンガから、今回『ダイヤのA』を挙げたのはどうしてですか?

 僕はもともと高校野球が好きなんです。大人になる一歩手前の3年間に凝縮されるスポーツで、しかも甲子園を目指す特別感もあってドラマが生まれやすいですよね。『ダイヤのA』も、そう。野球の本格的なゲーム展開もおもしろいんですけど、それ以上に、ひとりひとりの覚悟や仲間を思う気持ち、人として成長していく姿がドラマとしてしっかり見えるところが、すごく好きです。

――主人公の沢村栄純がいる青道高校は強豪です。全国から野球留学で部員が集まるなか、レギュラーと控え、先輩と後輩など、部活動ならではの関係性やそれぞれの思いが丁寧に描かれている感じがします。

 そうですね。青道はレギュラー争いが熾烈だからこそ、控えの選手が悔しさをこらえてレギュラーの背中を押したり、3年生の意地や最後の夏にかける執念に下級生が引っ張られてチームが結束したり、そういう場面が際立っている気がしますね。

 沢村は新入生で入部して夏の大会のベンチメンバーに入るのですが、代わりに自分が慕っていた先輩が外れてしまいます。そのとき3年生が沢村に、出られない仲間の気持ちも背負って戦うんだと諭すシーンがあって、かなり印象に残っています。自分のことだけじゃなく、誰かの思いを背負ったとき人は強くなれます。先輩から後輩へ、技術以外の大事なものを伝えていくところにグッときますね。

 あと、僕はこの主人公が大好きなんです。明るくて素直で、これと決めたらまっすぐ突き進む。壁にぶつかっても挫けずに努力し続ける。その気持ちの強さや周りを引っ張る姿が、見ていてすごく爽快です。ちょっとバカなところもかわいい(笑)。

『ダイヤのA』10巻、P100-101より ©寺嶋裕二/講談社
『ダイヤのA』10巻、P100-101より ©寺嶋裕二/講談社

――今どき珍しいほどの熱血キャラですよね。でも沢村はエースではなくて、同学年のライバルである降谷にもずっとリードされています。これからの展開はわからないですが、主人公が〝二番手〟という設定はなかなかないですよね。

 僕も最初は、沢村より降谷のほうが活躍するのが不思議でした。でも読んでいくうちに、性格も投手としての強みもまるで違うふたりの対比や関係性がおもしろくなってきたし、降谷がいるから沢村のキャラがより引き立つんだなと。

 沢村は降谷にいつも先を行かれてすごく悔しい思いをしていますが、降谷の実力や自分に足りない部分をちゃんと認めて絶対に腐らない。自分が出ていない試合でも誰よりも声を出して、たまにヤジも飛ばしながら(笑)、降谷やチームを鼓舞します。僕らのウィルチェアーラグビーでもいえることですが、チームスポーツはひとりひとりに必ず役割があって、それをみんなが果たしていくことで初めてチーム一丸になれるんです。それを体現しているというか、いつも自分の役割をまっとうしている沢村はカッコイイと思います。ほんとに、いい奴なんですよ!

監督の言葉がいちいちカッコいい

――沢村への愛が深すぎます(笑)。主人公の魅力もそうですが、『ダイヤのA』ならではの、ほかの野球漫画にはないおもしろさはどこにあると思いますか?

 僕は沢村と同じくらい青道の片岡鉄心監督が好きなんですけど、指導者側の視点で監督の心の動きも細かく描かれているのが、このマンガならではかなと思います。片岡監督はストイックで厳しい鬼監督だけど、主力以外の部員にも目を配りながらチーム全体を成長させて勝利に導こうとします。選手の持ち味を生かした指導や采配もおもしろいし、監督自身が高校球児だったから3年間にかける選手の思いを痛いほどわかっていて、その気持ちに寄り添う言葉だったり、叱咤する言葉だったり、いちいちカッコいいことを言うんです。

――たしかに名言が多いですね。夏の甲子園予選の前、ベンチ入りできなかった3年生に「これからもずっと俺の誇りであってくれ」と言って労っていたし、春の選抜に出場を決めたときは「3年生と掴んだ勝利でもある」と言って泣きながら引退した3年生に頭を下げていました。

 選手を思う気持ちが伝わるから、この監督についていこうと思うんですよね。監督のセリフで印象的だったのは「自信の上には奢りがあり、謙遜の下には卑屈がある」という言葉。僕たちのウィルチェアーラグビーの日本チームは8月の世界選手権で金メダルを獲りました。そこで過信せずに、常に挑戦者の気持ちでもっと上を目指さなければいけないし、でも世界一になったというプライドは忘れないでいたい。どっちにも行きすぎず、気持ちを保ってプレーすることがすごく大事だなと思い、監督のセリフに強く共感しました。

――ほかにはどんなマンガが好きですか?

 スポーツものなら『SLAM DUNK』『シュート!』『はじめの一歩』ですね。僕はケガをする前はサッカーをやっていて、ちょうど『シュート!』が世代だったんです。スポーツ以外なら『幽☆遊☆白書』がずっと好きで、同じ作者の『HUNTER×HUNTER』も休みがちな連載を楽しみに待ちつつ読んでいます。あと『ドラゴンボール』や『ワンピース』はやっぱり好きですね。

――かなり読んでますね。最近、ウィルチェアーラグビーを題材にしたマンガ『マーダーボール』も登場しました。この作品は今井さんたちも関わっているんですよね?

 はい。日本ウィルチェアーラグビー連盟が監修で入っています。作者の先生がとても熱心な方で、練習に何度も顔を出して僕らに質問して、忠実に描かれているからおもしろいですよ。ウィルチェアーラグビーのマンガは初めて。まだ1巻が出たばかりで、今後どうなっていくか楽しみです。競技のことが広まっていくきっかけにもなればと期待しています。

>後編「僕らの特徴を生かした競技で金メダルを」はこちら