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樹木希林さんとの一期一会、原作のチャーミングな言葉に共感 黒木華さん「日日是好日」に主演

文:渡辺鮎美、写真:樋口涼

茶道を続けた25年を黒木華さん1人で演じきる

 人生に不安と焦りを抱えた20歳の女性が、母親の何げない言葉をきっかけに茶道を始めた。近所に暮らす茶道の先生の元で25年にわたって続けた稽古を、自身の半生も重ねて丁寧につづった森下典子さんの自伝エッセー「日日是好日 『お茶』が教えてくれた15のしあわせ」(新潮文庫)が映画化された。

 主人公の典子を、20歳から45歳まで1人で演じたのは黒木華さん(28)。撮影前に読んだという原作の感想を「長年お茶を続けてきた人の人生を垣間見ることができました。思いを素直に表現する森下さんの言葉はとてもチャーミング。本から感じた天真らんまんな印象は、そのまま演じるようにしました」と語る。

 お茶の稽古を巡る原作の描写は「古くさくてカッコわるい」に始まり、茶せんでシャカシャカ……と茶をかき回す様子に「そうそう、これこれ! これがお茶よね」、季節ごとに異なる決まりごとに戸惑いながらも繰り返す稽古の日々を「賽(さい)の河原の石積み」と、親しみを覚える表現が並ぶ。「茶道を知らない人が読んでも、共感したり発見したりすることができるのが人気の理由だと思います」と黒木さん。自身の共感ポイントは「自分の内側に耳をすます」や「五感で自然とつながる」。「どちらも普段は忘れがちで、なかなか実践できないこと。すてきだと感じました」

1カ月の稽古で茶道との距離がぐっと近くに

 茶道未経験の黒木さんは、事前に1カ月間の稽古を経て撮影に臨んだ。「指導の先生は、まずは難しく考えずにやってみましょう、というスタイル。体験することで、ぐっと距離が近くなりました」。掛け軸の「書」を絵画のように視覚的に眺めたり、本物の茶器を前にその違いを感じたり、茶道の奥深さや面白さに触れたという。「お茶わんに正面があるとか、掛け軸に達磨(だるま)の絵があるなんて、初めて知りました。登場する和菓子も一つひとつがとても可愛かったです」。一方、ふくさのたたみ方を始め、覚えなくてはならない所作、決まりごとの多さには苦労も。撮影の流れを止めないように、お茶をたてるところから道具を片付けるところまでを、何度も練習した。

 映画の中の典子は、まじめで努力家だが理屈っぽくておっちょこちょい。将来の進路、就職、結婚――本当にやりたいことがわからず、自分に自信が持てないでいる。撮影では「彼女がぶつかる壁や悩みは、誰もが経験するもの。丁寧に表現しようと心がけました」。一緒に茶道を習う同い年のいとこ、美智子(多部未華子)は典子とは対照的な性格。彼女の存在も、典子の人柄を浮き立たせる。

Ⓒ2018「日日是好日」製作委員会
Ⓒ2018「日日是好日」製作委員会

樹木希林さんの言葉には内から出てきた重みがあった

 典子と美智子にお茶を教える「タダモノじゃない」茶道家の武田先生は、去る9月15日に75歳で亡くなった樹木希林さんが演じた。映画は、その大半が横浜市にある一軒家の一部を改造して作られた、先生の教室を舞台に繰り広げられる。黒木さんは8月のインタビューの際、初の共演となった樹木さんについて「せりふに、本当にご自身の内から出てきた言葉であるかのような重みがありました。また物語が時を経て、年齢を重ねていくごとに『武田先生』の姿もしぼんでいくように見えました。とても素晴らしい女優さんです」と語っていた。

 「世の中には、『すぐわかるもの』と、『すぐわからないもの』の二種類がある」という言葉を軸に流れる物語。最初はピンとこなかった千利休の「一期一会」の教えが、その後訪れる大切な人との突然の別れと結びつく場面には、胸をつかれる。巡る季節の中、繰り返す茶道の稽古を通じて、典子は少しずつ成長していく。武田先生は習い事の先生という枠を超えて人生の道筋を示してくれる、役柄の上でもとても大きな存在だ。黒木さんは樹木さんの訃報を受け、「ご一緒できたことはとても光栄でしたし、かけがえのない時間でした。もっと、もっと、お話ししたかったです」とコメントを寄せた。

 いつでも本を持ち歩くほどの読書家・黒木さんのブックライフは国内外、新旧を問わない。「昔の作家だと太宰治が好きですし、書店でジャケ買いや、帯買いをすることもあります。読書で物語を疑似体験することは、演技の大きな助けになっています」。最近はまっているのがミステリーだ。「ちょうど湊かなえさんの『未来』を読んでいるところです。ほかにも沼田まほかるさんなど、イヤミス(読後、嫌な気持ちになるミステリー)が結構好きですね。少し前に読んだ中村文則さんの『教団X』もよかった。ミステリーは、そのドキドキ感と、伏線がサーッと見事に回収される時がたまりません。本当に、しびれます!」

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