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「ヒットの設計図 ポケモンGOからトランプ現象まで」 なじみ感と新規性のバランス求め

『ヒットの設計図 ポケモンGOからトランプ現象まで』 [著]デレク・トンプソン

 本書は音楽や小説、映画、スマホアプリなど様々なコンテンツで、ヒット作が生まれた理由や背景を解き明かす。著者は米国の高級誌「アトランティック」の編集主任。
 コンテンツ制作面のヒット要因として強調するのが、「なじみ感」と「新規性」のバランス。人は「知っているキャラクターや俳優や筋書きの映画」を見たがると同時に、そこに「新しい進展」や「驚き」も求める。これを「最適レベルの新しさ」と呼ぶ。
 他方、コンテンツの拡散については、昨今、人から人へと伝わる「バイラル神話」が優勢だが、実態は違うという。デジタル世界の巨大ヒットは、1対1がつながる瞬間が100万回生じたのではなく、1人で数百万人のフォロワーにリーチできる著名人ら「闇のブロードキャスター」のお陰だ。
 ただし、これらはコンテンツ業界関係者には既知の事柄かもしれない。むしろ本書の特徴は、ヒットにまつわる豊富な事例だ。まだラジオもない1869年に発表された「ブラームスの子守歌」が世界に広まった理由は、戦争と飢餓に苦しむドイツ人の歴史的大移動にあるという。こうした逸話が多数紹介された本書は、大衆文化に関する教養書の趣が強い。=朝日新聞2018年10月20日掲載