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ほろ苦い恋に思わず涙する! 「若者のせつない恋愛を描いた」本

 青春時代の恋愛で、ほろ苦い思いをした経験はあるでしょうか。若い頃の情熱的な恋心は、青春時代を彩る思い出の一つです。甘くて切ない上質な物語を読めば、あの頃の恋の思い出がきっとよみがえってくるでしょう。思わず涙を流してしまうような、若者たちの心をゆさぶる恋愛を描いた本を集めました。

  1. 「若きヴェルテルの悩み」(ゲーテ、ちくま文庫)
  2. 「舞姫」(森鷗外、角川文庫)
  3. 「ノルウェイの森」(村上春樹、講談社文庫)
  4. 「春の雪 豊饒の海1」(三島由紀夫、新潮文庫)
  5. 「狭き門」(ジッド、光文社古典新訳文庫)

(1)「若きヴェルテルの悩み」
 青年ヴェルテルは美貌の女性シャルロッテに恋心を抱きます。しかしシャルロッテにはすでに婚約者がいて、許されない恋にヴェルテルは苦悩します。報われないと知りながら恋してしまうヴェルテルの激しい想いは、思わず胸が苦しくなるほどです。作者であるゲーテ自身の体験が反映された、青春時代の切ない恋を描いた名作です。

(2)「舞姫」
 ドイツへと官費留学した太田豊太郎は、美しい少女エリスと出会い恋をします。2人の関係が次第に深まってゆくなか、豊太郎の素行をよく思わない上司によって、豊太郎は免官の危機に陥ってしまいます。愛と仕事の板挟みのなかで運命に翻弄されてゆく主人公や登場人物たちの姿に、恋の切なさや、はかなさが描き出されています。

(3)「ノルウェイの森」
 主人公は飛行機のなかで学生時代の記憶を回想していきます。そこで親友の死や恋人との交流を通じて、子どもから大人へと移行する青年期の若者の複雑な心理が描かれます。生と死を主題にくり広げられるストーリーに流れる、淡く切ない青春の雰囲気。読めば自分の若い頃の記憶が呼び覚まされるような、現実感あふれる恋愛小説です。

(4)「春の雪 豊饒の海1」
 主人公・松枝清顕は、幼なじみの綾倉聡子から慕われているにもかかわらず、つれない態度をとっています。やがて聡子は皇族の皇子に見初められ、その皇子の婚約者となってしまいます。立ちふさがる壁を前に、聡子への恋心を燃え上がるように募らせていく清顕。明治末期の日本を舞台に、素直になれない若者の恋が繊細に描かれています。

(5)「狭き門」
 主人公ジェロームは、年上の従姉アリサと恋に落ち、2人は相思相愛に。しかしアリサはキリスト教への強い信仰心のために、ジェロームと結ばれることにためらいを覚えてしまいます。地上的な恋と信仰による天上への愛に葛藤し、理想と現実のはざまに置かれた人間の苦しみが、ひしひしと伝わってくる小説です。