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ホップもモルトも酵母も水もすべて“京都産”のビールを目指して

文・イラスト:藤原ヒロユキ
文・イラスト:藤原ヒロユキ

To The Beer Bar~ちょいのみ親父の探訪記~ 第26回「SVB KYOTO(スプリングバレーブルワリー京都)」(京都・錦富小路)

 ♪まるたけえびすにおしおいけ♪
 京都の“通り”の名前を憶えるための数え唄である。♪あねさんろっかく、たこにしき、しあやぶったか、まつまんごじょう♪と続く。

 東西の通りは、北から丸太町通り(以下、通りを省略)、竹屋町、夷川、二条、押小路、御池、姉小路、三条、六角、蛸薬師、錦小路、四条、綾小路、仏光寺、高辻、松原、万寿寺、五条。数え唄と照らし合わせていただきたい。
 さらに唄は、♪せったちゃらちゃらうおのたな、~(中略)~、じゅうじょうとうじでとどめさす♪と続くのだが、後半は今の通りの名前と若干違っているし、歌詞が違うヴァージョンもあるので憶えにくい。

 南北の通りを東から憶えるための唄は、♪てらごこふやとみ、やなぎさっかい~♪と西陣まで続く。寺町通り(以下、通りを省略)、御幸町、麩屋町、富小路、柳馬場、堺町~だ。
 あー、もー無理。通りが多すぎて憶えられない。

 エイ出版社の『通りをひもとくと京都がわかる』を読むと、東西27通りと南北33通りの計60通りの名の由来と現在のようすを知ることが出来る。通りの歴史を知れば憶えられる気がするので、しっかり読んで憶えたいと思う。
 なぜならば、「通りの名前を憶えておけば道に迷うことがない」からだ。
 京都の町は碁盤目状なので、通りと通りの交差点から、「上る(北)」、「下る(南)」、「東入る」、「西入る」で住所がわかる。
 「烏丸四条上る」と言えば「烏丸通りと四条通りの交差点の北」、「烏丸四条西入る」ならば「交差点の西」である。

 SVB(スプリングバレーブルワリー)は、キリンビールの社内ベンチャーとして生まれたブルーパブ(醸造所が併設されたパブ、レストラン)で、2015年に横浜と代官山、2017年に京都がオープンした。
 その名は1870年に、ウイリアム・コープランドによって横浜に作られた日本初の醸造所「スプリングバレーブルワリー」に由来する。

 「SVB KYOTO」を初めて訪れた時「こんな一等地にこんな大きな物件が、なんで残っていたのぉ!?」と驚いた。住所は、「富小路通錦小路上る」である。“にしき”は数え唄の真ん中あたりだ。京都のど真ん中である。錦小路にある錦市場といえば、海外からの観光客が「一番行ってみたいところ」といわれているスポットのひとつでもある。
 その錦小路からほんのちょっと「上る」場所なのだ。たまに「上がるって聞いたから交差点から北に進んだけど、それって、もうひとつ北の交差点から下がるって言ったほうが近いんちゃうのん?」とぼやきたい場所があるが、ここは正真正銘の「錦小路上る」である。

 築約100年の町屋を活かした「SVB KYOTO」では、京都ならではのビールが楽しめる。
 私のお気に入りは「京都YOSANO IPA」だ。京都北部に位置する与謝野町で栽培されているホップを使ったビールである。
 実はこの与謝野ホップの栽培、2015年に私が与謝野町とともに立ち上げたプロジェクトなのだ。自ら栽培して収穫したホップが使用されたビールを飲むことは、この上ない幸せである。

 また、2018年の7月には「SVB KYOTO」のヘッドブルワー三浦太浩さんとブルワー北林剛さんが、与謝野町まで足を運び、収穫したホップをすぐさま持ち帰って仕込みに使った「京の初摘みホップ」というビールも造られた。ちなみに与謝野ホップは北半球で最も早い収穫時期をむかえるホップで、「京の初摘みホップ」は2018年の“世界最速仕込み”と言っていい。

 さらに、京都産の原料100%(ホップもモルトも酵母も水もすべて“京都産”)のビールを造ろうという「京都産原料100%ビール(通称「K100」)プロジェクト」も進行中で、その第一弾として「K80(80%京都産。モルトがまだ完全に京都産だけではまかなえていない)」ビールが12月にお披露目される予定。
 ビールだけではなく、料理にも京都らしい逸品が揃う。旬の京野菜はもとより、筍山椒、半兵衛のお麩、京都モリタ屋の和牛、丹波地鶏や京丹波高原豚などだ。
 京都を訪れたならば、「SVB KYOTO」で京都のビールと京都の食を楽しみたい。

 さてさて、くだんの数え唄だが、なんとか憶えられたのは……、♪まるたけえびすにおしおいけ、あねさんろっかくたこにしき♪までである。♪しあやぶったか……♪ あたりからちょっとあやふやだ。南北の通りは、♪てらごこふやとみ、やな~っぎさっかい♪まで……。
 でも、まっ、いいかぁ。【にしき】と【とみ】までわかっていれば、SVB KYOTOに辿り着けるから(笑)。

 京都富小路通錦小路上るの「SVB KYOTO」。
 本当に、いい店だ。また訪れたくなる。