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文芸回顧2018 磯﨑憲一郎さん、逢坂剛さん、鴻巣友季子さんの「私の3点」

磯﨑憲一郎(小説家)

  • 金井美恵子『「スタア誕生」』(文芸春秋)
  • 山尾悠子『飛ぶ孔雀(くじゃく)』(文芸春秋)
  • 保坂和志『ハレルヤ』(新潮社)

 今年の本紙「文芸時評」で取り上げた順。優れた小説は必ず、他に似たもののない、独自の語り口で書かれている、しかしそれ以上に大事なことは、それがどうしても書かれねばならなかった切実さと信念に貫かれているという、そのことを示す三冊。

逢坂剛(小説家)

  • 高城高『〈ミリオンカ〉の女』(寿郎社)……(1)
  • 馳星周『蒼(あお)き山嶺(さんれい)』(光文社)……(2)
  • 鷹匠裕『帝王の誤算』(角川書店)……(3)

 (1)明治のウラジオストクを舞台とする、目の肥えた読者向きの、おとなの国際冒険小説。(2)骨まで凍る雪山踏破の、だが奥底に熱い思いを秘めた、著者の新境地を示す佳作。(3)20世紀後半の、広告業界の熾烈(しれつ)な攻防を描いた、出色の経済小説。

鴻巣友季子(翻訳家)

  • ナオミ・オルダーマン『パワー』(安原和見訳、河出書房新社)……(1)
  • ジョゼ・ルイス・ペイショット『ガルヴェイアスの犬』(木下眞穂訳、新潮社)……(2)
  • リチャード・フラナガン『奥のほそ道』(渡辺佐智江訳、白水社)……(3)

 今年はディストピアにフェミニズムが合流。(1)男女の立場が逆転した世界を鋭利なアイロニーで。(2)村の生活をミクロ的に描きマクロな宇宙を映すポルトガルの黙示録文学。(3)泰緬鉄道建設に従事した豪州捕虜の語る歴史の暗黒面と抒情(じょじょう)。

*番号は順位ではありません=朝日新聞2018年12月19日掲載

>朝日新聞文芸担当記者による回顧記事はこちら