1. HOME
  2. コラム
  3. To The Beer Bar
  4. チェコ生まれの「元祖ピルスナー」に魅せられた男の、熱き1杯

チェコ生まれの「元祖ピルスナー」に魅せられた男の、熱き1杯

文・イラスト:藤原ヒロユキ

To The Beer Bar~ちょいのみ親父の探訪記~ 第30回「横浜ベイブルーイング 関内本店」(横浜・関内)

 店には、ジャパンブルワーズカップのポスターが貼られている。

 ジャパンブルワーズカップとは、「醸造家が審査員となるビアコンペティション」「国内外のクラフトビールが飲めるビアフェスティバル」「醸造家の勉強会ブルワーズカンファレンス」が複合したイベントで、毎年1月に横浜大さん橋ホールでおこなわれる。全300種にも及ぶクラフトビールを1杯300円から飲めるフェスティバルは2019年1月25日(金)~27日(日)、横浜大さん橋ホールで開催予定である。詳しくはこちらでご覧いただきたい。 

 このジャパンブルワーズカップの主催者は「横浜ベイブルーイング」のオーナーブルワー鈴木真也君だ。
 真也君は超のつく“ボヘミアンスタイル・ピルスナー好き”である。

 ピルスナーは1842年にチェコのピルゼンで生まれたビアスタイルだ。今や「世界で最も飲まれているビアスタイル」である。日本でも馴染み深い。
 とは言え、日本のピルスナーは、チェコ生まれのピルスナーがその後ドイツで進化した「ジャーマンスタイル・ピルスナー」を参考にしているケースが多い。

 この「ドイツ版ピルスナー」とは一線を画すために、チェコで生まれた“元祖ピルスナー”を「ボヘミアンスタイル・ピルスナー」と呼ぶのが世界標準である。
 真也君は、この「ボヘミアンスタイル・ピルスナー」に魅せられた醸造家なのだ。

 「ボヘミアンスタイル・ピルスナー」の特徴のひとつとしてあげられるのが「デコクション法」による糖化である。
 糖化とは、破砕した麦芽にお湯を加えることによってでんぷんを糖に変える作業で、その際に糖化槽の中からマッシュ(麦芽にお湯を加えた粥状のもの)の一部を取り出して煮つめ、もとの糖化槽に戻して昇温するテクニックが「デコクション法」である。

 「デコクション法」は糖化槽とは別の釜が必要だし、時間もかかるので、「インフュージョン法(糖化槽を直接熱して昇温する方法)」で造られるビールが多くなっている。
 しかし、真也君はデコクションを3回も行う「トリプル・デコクション」を続けている。
 デコクションによって、麦芽の一部がカラメル化し、こうばしさと甘味と豊かな色合いがビールに宿る。これこそが、真也君の愛する「ボヘミアンスタイル・ピルスナー」の魅力なのである。

 「横浜ベイブルーイング」がオープンしたのは2011年だ。「横浜ビール」の醸造長として修業を積んだのちの独立である。
 始めは「横浜ベイブルーイング関内店」の奥のスペースでビールを造っていたが、2016年には戸塚の上矢部町に醸造所を作り、関内店は純粋な「ビアバー」になった。タップからは横浜ベイブルーイングのビールはもちろん、真也君がセレクトしたクラフトビールが注がれる。フードメニューはチェコ式ポテトサラダやラスポテト(マッシュポテトをスティック状にして揚げる)、ナス料理がある。真也君自身が捌いた魚が並ぶこともある。

 2014年2月、「横浜ベイブルーイング」のピルスナーが、チェコで開催されたビアコンペティションで金賞を受賞した。
 ボヘミアンスタイル・ピルスナー発祥の地チェコで、並みいる本場の銘柄をおさえての優勝である。チェコ人が日本でおこなわれた寿司コンテストでチャンピオンになるような快挙と言っていい。

 無類のボヘミアンスタイル・ピルスナー好きの真也君だが、他のスタイルのビールを造らないわけではない(笑)。
 彼の造るウィートエール、ヴァイツェンボック、IPA、ブラックマイルドなども人気が高い。

 2015年からは横浜DeNAベイスターズ公認ビール「ベイスターズエール」も醸造している。地元の醸造所にオリジナルビールを造ってもらうことはベイスターズが、アメリカの球団経営から学ぶ「地域密着型の球団つくり」をしている証のひとつでもある。横浜DeNAベイスターズが刊行した『BALLPARK』という本を読むとそのポリシーを強く感じる。
 美しい写真がたっぷりの『BALLPARK』のページをめくりながら、「横浜ベイブルーイング」のビールを飲むと「横浜は、いい街だなぁ」としみじみ思う。

 横浜・関内の「横浜ベイブルーイング 関内本店」。
 本当に、いい店だ。また訪れたくなる。