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古墳と純喫茶 歴史ロマンに浸りながら「日々のビール」を

文・イラスト:藤原ヒロユキ
文・イラスト:藤原ヒロユキ

To The Beer Bar~ちょいのみ親父の探訪記~ 第31回「ヒビノビア クラフトビアキッチン&ストア」(大阪・堺東)

 大阪府堺市の中心地はどこなのか? と検索したら「堺東駅周辺」という答えが最も多かった。
 そんな堺東にある「ヒビノビア」を初めて訪れた時、巨大なアーチ状の天井やシャンデリアを見上げ「なんじゃこりゃ?」と声をあげてしまった。

 モダンな外観(ダークビールとその泡をイメージしたもの)とは明らかに違ったセンスの内装である。
 正直なところ、若干の違和感が漂う。
 しかし、この天井の逸話を聞くと、これは残されるべくして残った「歴史のモニュメント」と感じることとなる。

 堺市は「大阪市のすぐ南の市」である。
 大阪市の南の端を流れている大和川を渡ると、そこは堺市だ。
 大仙陵古墳など多くの史跡がある場所で、5世紀にはすでに重要な地であったと考えられている。

 ところで、大仙陵古墳はいつから大仙陵古墳と呼ばれるようになったのか? クフ王のピラミッドを超える478,600㎡という巨大な前方後円墳は、私たちの世代にとって大仙陵古墳ではなく「仁徳天皇陵」と呼ぶのがスタンダードだった。読者の中にも「えっ? 仁徳天皇陵じゃないの?」という方も多いと思う。

 宮内庁のホームページによると、この古墳の御陵名は「百舌鳥耳原中陵(もずのみみはらのなかのみささぎ)」で、天皇名は仁徳天皇とある。
 しかし、文春新書『天皇陵の謎』などによると、この古墳に誰が埋葬されているか断定できないとのことだ……。仁徳天皇のお墓であるとも、ないとも言い切れないというのが学術的な考え方なので大仙陵古墳と呼ぶべきということである。
 が、ま、そこはあまり深く考えずに過ごしたい。だって、これだけのデカイお墓なんだから、とにかく偉い人が埋葬されたことは間違いないのである(笑)。

 「ヒビノビア」は「毎日、ビールと暮らす」というコンセプトで、ビアパブとビール専門の酒販店が合わさった店である。
 樽生ビールが注がれるタップが12本と100種類のビールが揃う冷蔵庫が壮観だ。ボトルビールは買って持ち帰ることも、価格+200円(税別)で店内で飲むことも出来る。
 オーナーの西尾圭司さんは、同じ堺市の中百舌鳥駅前で2007年から「エニブリュ」というクラフトビアダイニング・バーを営む“関西クラフトビール界の重鎮“である。ビールのセレクションは間違いがない。

 その西尾さんが、堺東に出店するに際し、いくつかの物件を見て歩いた中で「ここだ!」と決めたのが今の「ヒビノビア」となる物件である。
 40年間、純喫茶として営業していた店で、西尾さん自身も若かりし頃に何度か利用したことがあった。
 運命を感じた西尾さんは、内装の一部をそのまま残して「ヒビノビア」とした。

 それが、巨大なアーチ状の天井とシャンデリアである。
 一度すべてを取り壊してから改装したほうが楽だったのではないかと察するが、レガシーとして残しておくことにしたとのことだ。

 この話を伺った時、「あ~、縁(えにし)を大切にする西尾さんらしい話だなぁ」と思った。そして、これって堺っぽいなぁとも感じた。

 仁徳天皇陵でも大仙陵古墳でも百舌鳥耳原中陵でもいいじゃないか。そこは御陵なんだから。ずーっと昔からそこにあり、どなたかが眠っていらっしゃるんだから。
 歴史のモニュメントを大切にすることは縁を大切にすることでもある。

 日々の連続が歴史を作り、人の縁を繋いでいくのだ。
 柄にもなくちょっぴり哲学的(?)な気分と歴史のロマンに浸りながら、今日も“日々のBeer”を頂くことにする。

 堺東の「ヒビノビア」。
 本当に、いい店だ。また訪れたくなる。