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新書ピックアップ(朝日新聞2019年1月12日掲載)

『機密費外交』 

 1945年8月に日本政府は機密文書の焼却を決定したが、それを免れて満州事変前後の外交機密費に関わる領収書や電報が残存した。諜報(ちょうほう)、接待、広報に使われた外交機密費を通して、往時の外交が戦争回避の可能性をにらみつつ、どう展開したかをたどる。満州国の承認をめぐるリットン調査団の対応や、停戦協定のもとで日中関係立て直しをめざす動きなど、開戦へ一直線だったわけではない様相も浮かぶ。
★井上寿一著 講談社現代新書・994円

『縄文探検隊の記録』

 縄文時代を熱烈に愛する考古学者の岡村と、その魅力にはまり縄文小説を構想する作家の夢枕が、縄文の足跡を訪ね、時にゲストを交えて語りあう。鍋料理をはじめ合理的で豊かな食、機能的な住まい、独自の発達を遂げた土器や漆文化、土偶の謎、信仰のあり方や精神世界……最新の研究と作家の想像力がコラボし、縄文ワールドが広がっていく。構成・かくまつとむ。
★夢枕獏・岡村道雄著 インターナショナル新書・929円

『新版 ナチズムとユダヤ人』 

 副題は「アイヒマンの人間像」。1961年エルサレムでのアイヒマン裁判を、評論家・仏文学者の著者も傍聴した。オーストリアの中流家庭出身のセールスマンだった平凡な青年が、どのような経緯で出世をとげ、ユダヤ人絶滅計画の実行者になったか。収容所を生き延びた人々の証言と合わせ、事態の推移を報じる。62年に新書で刊行され、72年に文庫化された作品を、若干の修正を加えて復刊。
★村松剛著 角川新書・907円

『自炊力』

 副題は「料理(レシピ)以前の食生活改善スキル」。ちゃんと料理するのはハードルが高いという人向けに、フードライターの著者が、気楽に楽しく始められるヒントを紹介する。コンビニや冷凍食品の活用法、雑誌「栄養と料理」元編集長との対談、著者の自炊日記などを掲載。「面倒なことはやらない」というのが自炊嫌いにならないコツだという。
★白央篤司著 光文社新書・864円