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銀座の名店の技を踏襲した焼き鳥とクラフトビール 格別の組み合わせ

文・イラスト:藤原ヒロユキ
文・イラスト:藤原ヒロユキ

To The Beer Bar~ちょいのみ親父の探訪記~ 第33回「焼鳥 クロウタドリ」(東京・大塚)

 山手線ゲームで「大塚」は、忘れがちな駅である。なんて言うと怒られるだろうか?
 山手線ゲームとは、元々「古今東西」と呼ばれるお座敷遊びで、指定された題目にあてはまる解答を参加者が順にあげていくものだ。

 たとえば、題目が「都道府県名」だとすれば、思いつくままに「宮城県」「東京都」「北海道」――、「サザンオールスターズの曲名」なら「いとしのエリー」「栞のテーマ」「勝手にシンドバッド」――といった具合に答えていき、解答につまってしまうと負けである。

 近年、コンパや飲み会でおこなわれるようになった際に、代表的な題目が「山手線の駅名」だったことから山手線ゲームと呼ばれるようになった。
 この、「山手線の駅名」だが(解答者の生活圏にもよるが)、「北側エリア」と「有名な駅の隣」を忘れてしまう人が多い傾向にある。
 となると、大塚は分が悪い。北側だし、両隣が池袋と巣鴨だし……。

 個人的に、大塚はといえば、「なべ家」と「こなから」である。どちらもすでに閉店してしまっているが、素晴らしい日本料理屋だった。

 「なべ家」店主の福田浩さんは料理人だけでなく江戸料理の研究家の顔もお持ちで、江戸時代のレシピを再現・紹介した料理本の著者としても有名だ。落語や俳句・川柳に登場する江戸時代の料理を再現した『完本 大江戸料理帖』や豆腐を使った江戸時代の料理100点を再現した『豆腐百珍』などは福田さんだからできる仕事だと思う。
 「なべ家」には取材で何度か訪れたことがあり、福田さんから貴重なお話を直接伺うことができたのは私の財産と言っても過言ではない。

 「こなから」は、和食の基本をふまえながら創作的な料理を出す名店だったが、板前の原透悦くんが辞めてから足が遠のいた。ちなみに、原くんが次に出した麻布十番の「IZAYOI」にも通ったのだから、彼の料理にかなり惚れこんだんだなぁと我ながら思う。
 どっちにしても、私にとって大塚は「日本料理の町」だった。

 そんな大塚のビールの名店は、日本のクラフトビールを中心におばんざいと牡蠣と日本酒が楽しめる「麦酒庵」、クラフトビールを飲んで買えて宇都宮餃子も食べることができる「Titans Craft Beer Taproom & Bottle Shop」、クラフトビールと薫製料理のペアリング推しの「スモークビアファクトリーNAMACHAんBrewing」などあるが、新たなお気にいりは「クロウタドリ」である。
 他ではなかなか味わえない「焼き鳥とクラフトビール」という組み合わせのうえ、その焼き鳥が銀座の名店「バードランド」の技を踏襲しているとなれば格別である。

 フランス料理の巨匠ジョエル・ロブションも絶賛した銀座「バードランド」の和田利弘さんの焼き鳥の凄さは改めて別の機会に述べるとして、「クロウタドリ」の店主・志摩徹さんが「バードランド」で修行していたということなら、これは「間違いない!」のである。

 JR大塚駅南口を出て、都電荒川線の軌道を渡り、都道436号線を進み、三つ目の角を左折すると、風情のある小路に「クロウタドリ」はある。

 カウンターに陣取り、まずは今日のオン・タップを確認。全部で7つある生樽ビールの中から、スワンレイクビールのアンバースワンエールを選ぶ。肴は一品料理からレバーパテ、串は単品メニューからつくね、ねぎま、焼きチーズを選択。
 レバーパテをつまみながら、アンバースワンエールをゆっくりと楽しんでいると、グラスが半分ほど空になったあたりで串が焼きあがってくる。つくねのあまからさがアンバースワンエールの香ばしさと調和する。

 ねぎまが供されたタイミングでプレストンエールのIPAをオーダー。昨今はやりのアメリカンスタイルIPAではなくイングリッシュスタイルのIPAである。ほどよいホップ感が鶏の旨味を引き出し、ねぎの「香味のある野菜らしさ」とシンクロする。

 焼きチーズには、いわて蔵ビールのオイスタースタウト。焼けたチーズのトロ~とした食感と発酵乳製品の持つ力強さを、三陸の牡蠣を副原料に使った漆黒のビールが受け止めてくれる。絞めにピッタリの組み合わせである。

 大塚はやっぱり、旨い料理と旨いビールが似合う町なのだ。
 「クロウタドリ」があるかぎり、山手線ゲームで大塚を忘れることは絶対ないね(笑)。

 大塚の「クロウタドリ」。
 本当に、いい店だ。また訪れたくなる。