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過剰で珍奇 すがる思いが集積

奉納百景 神様にどうしても伝えたい願い 著者:小嶋 独観 出版社:駒草出版 ジャンル:歴史・地理・民俗

価格:1620円
ISBN: 9784909646118
発売⽇: 2018/11/30
サイズ: 21cm/231p

こんな祈願法見たことない! 錆びたハサミ(縁結び)、釘を打った男根(浮気防止)、紙で作ったスマホ(祖霊送り)…。日本各地の一般にはあまり知られていない奇妙な奉納習俗と、そ…

評者:野矢茂樹 / 朝⽇新聞掲載:2019年02月02日

奉納百景 神様にどうしても伝えたい願い [著]小嶋独観

 いろいろなものが奉納される。その写真がほぼ全ページにあり、つい説明の言葉を読む前に写真だけを見てしまう。そしてしばしばただ絶句する。しかし、それはいくつもの言葉が自分の中に湧き起こりせめぎあった上での絶句である。
 どれを紹介しよう。うーむ、一番インパクトがあるのはこれかなあ。びっしり釘が打ちこまれた木彫りの男根。痛そうである。それが積み上げられている。何のために? 浮気封じだそうだ。見た目の壮絶さに加えて、何かがそこから聞こえてくるような気がしてくる。切実な、声にならない声。しかし同時に、ごめんなさい、不謹慎にも笑いたくなってくるのだ。
 写真に添えられた解説も興味深い。しかし小嶋さんは、知的な興味だけではなく、人々の痛切な思いに共感し、同時にこみあげてくるおかしみも掬い取ってくれている。
 なるほど、これらの奉納は珍奇な光景でもあるだろう。だが小嶋さんはけっして珍百景を並べ立てたわけではない。むしろここに、いまでもこの国に息づいている信仰の命脈を見て取っている。奉納は、病気・けが、誕生・死別、愛憎、さまざまな受苦に関わる。なんとかしてもらおうと訴える。その相手は神でも仏でも、呼び方は何でもよい。ともかく自分を超えた何ものかにすがる。その気持ちは、おそらく私の心にも潜んでいる。だからこそ、例えば大量の帽子が(生首を差し出す代わりに?)奉納されてあるのを見ても、揺さぶられるのだ。
 しかし、共鳴しつつも、違和感を禁じ得ない。ふだんの生活で抑圧されているものが、ここに?き出しになっているからだろうか。多くの人たちが奉納し続けた結果、ハサミが、鎌が、絵馬が、性器が、おもちゃの刀が、人形が、過剰に、あまりにも過剰に反復されるからだろうか。
 やっぱり、本を開いて見せたくなる。ほら。きっとあなたも絶句する。
    ◇
 こじま・どっかん 1967年生まれ。神社仏閣ライター。著書に『ヘンな神社&仏閣巡礼』『珍寺大道場』など。