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スガキヤラーメンにあげづけ、しるこサンド……東海地方のスーパーの魅力にハマった菅原佳己さん

文:鈴木亜里子、写真:鈴木啓太(撮影協力:白壁フランテ)

ご当地の定番からスーパーオリジナルのグルメまで

 『東海 ご当地スーパー 珠玉の日常食』は「愛知のド定番」として赤味噌、八丁味噌の紹介から始まり、調味料の「コーミソース」「献立いろいろみそ」、和菓子の「なごやん」などの商品を歴史とともに詳しく説明している。商品紹介に続くのは、愛知・岐阜・三重の東海3県のご当地スーパーページ。名古屋在住の筆者もよく知っている地元のスーパーでも「こんな商品があったんだ」とか、「これ昔よく食べたな。懐かしい」「これはご当地商品だったんだ」などとページをめくるたびに一言口走ってしまう。

 なかでも興味をそそるのが、6ページに渡って展開する三重県津市の「マルヤスメルヴィ」。菅原さんが「買い物が楽しくなる夢の仕かけがいっぱい」というだけあり、まるで“食のアミューズメントパーク”のよう。自家製アイスキャンディーからエシレバターを使った高級パン、オリジナルスパイス、そのスパイスを使った手羽先揚げなど、おいしくてユニークなグルメが目白押し。また、店内でイタリアを感じたり、銀座を感じたり……。なんでも出てくる不思議な空間のとりこになる。他にもこの著書を読んで行きたくなったスーパーマーケットがいっぱいあった。

 菅原さんに著書の中で紹介した食べ物でお気に入りを聞いてみたところ、「東三河で売られているヤマシン醸造のオリーブ白しょう油は、お刺身やサラダにかけるだけでおしゃれで美味しい一皿になります。南知多のスーパーヤナギの『ほとんど二黄卵』は、その名の通り、ほとんどが双子の黄身。割っても割っても双子でびっくりするので、黙って朝食に出せば、驚きと喜びの食卓に。家族の笑顔がもれなくついてきます。個人的には飛騨地方のスーパーがとくに好きで、冷凍鶏ちゃんや赤かぶ漬物だけでもものすごい種類があり、“あげづけ”や燻り豆腐、ロケット豆腐など豆腐製品も驚くほど種類が多彩です」

松永製菓の「しるこサンド」(愛知県小牧市)

 菅原さんは1965年、東京生まれの東京育ち。学生時代は写真を学び、卒業後は「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」や「ねるとん紅鯨団」など大ヒットバラエティ番組に放送作家として参加。その後、今から28年前の25歳で結婚した。華やかなメディア関係の仕事に就いていた菅原さんだが、サラリーマンの夫は数年に一度転勤があり、結婚後はアルバイト程度しか働くことができない。働けないことへのもやもやした気持ちを持ちながらも、専業主婦としていろいろな土地で家庭第一の生活をした。

転勤先のスーパーの商品構成にビックリ

 結婚後に住んだのは、初めて足を踏み入れた愛知県豊田市。その後も国内だけではなく海外にも転勤を繰り返すが、愛知県は計16年と最も長い期間住んでいる土地となる。

 28年前、最初に新米主婦が驚いたのは、住んでいた家の近所にあったスーパー「ヤマナカ」。今も東海地区で展開する有名なスーパーマーケットである。“商品構成”が変わっていた。例えば、東京で「せんべい」というと埼玉の草加せんべいのような醤油味の米のお菓子を想像するが、愛知県では「せんべい」売り場には海老せんべいがずらりと並んでいて、丸い醤油味の草加せんべいはなかった。自分の欲しいものと違うものが置いてある愛知県のスーパーマーケットに違和感を覚え、同時に興味を持ち始めた。大型スーパーのフードコートのほとんどに、ご当地グルメの「スガキヤラーメン」や五平餅の店があることも愛知県ならでは。スーパーを見ているだけで、地元の雰囲気がよくわかった。

 幼少期からスーパーが好きで、小学生になると一人でおつかいに行っていた菅原さん。大人になっても結婚しても変わらずスーパーが好きで、子どもが生まれる前は「スーパーくらいしか自分の居場所がない」と思っていたこともあった。愛知県独自のスーパーを巡っては気になる商品を購入し、持ち前の技術でカメラに収めていた。夫婦で旅行することも多く、「行くあてのない旅」の先々で必ずご当地スーパーに立ち寄り、おもしろいものを買いあさってはカメラに収めた。その数、約10万枚。印刷が薄くなった感熱紙のレシートも情報として残してある。

 ご当地スーパーの商品写真コレクションは趣味の一環として行ってきたものだが、転機が訪れたのは12年前に東京でマンションを購入した頃。結婚16年目に第一子を出産し、付いていくのが当たり前だった夫の転勤も、子どもがいることで単身赴任になる場合もあるかもしれないと思い始めた。出産後は東京で出版社での仕事も再開したが、再び夫の転勤で愛知県へ。ここでしばらくは、専業主婦として家事と育児に専念する。

 子どもが小さな頃は思うように働くことができなかったが、いつかのために「転勤があっても続けられる仕事」を模索していたところ、昔から赴任地や国内旅行で撮りだめしていたご当地スーパーとそこで売られているおもしろい商品の莫大な数の写真を思い出し、「本ができるかもしれない」と出版社に売り込む。放送作家の仕事や雑誌編集のアルバイトをしていたこともあるので、文章を書くことには慣れていた。

古川屋のあげづけ(160円、岐阜県高山市)

 最初の著書は2012年の『日本全国ご当地スーパー 掘り出しの逸品』(講談社)。その後、ご当地スーパーブームの火付け役として、テレビやラジオ、雑誌、新聞などメディアへの出演や掲載が相次ぐ。菅原さんを一躍有名にしたのが、テレビ番組「マツコの知らない世界」。岐阜県高山市の郷土グルメ「あげづけ」を紹介し、マツコ・デラックスが絶賛したことからこの商品とともに菅原さんも大ブレーク。朝の情報番組でも火曜レギュラーとして4年間出演した。また、愛知県だけにとどまらず、講演活動は全国区に。14年には『日本全国ご当地スーパー』の続編も出版した。忙しい日々を送る菅原さんだが、今でも子育ての隙を見ては、全国のご当地スーパーを行脚している。

スーパーがおもしろい街は城下町が多い

 今回の本にまとめたように、愛知県を始めとする東海エリアのスーパーは相変わらずおもしろいが、最近ハマっているのが高知県のスーパー。「外でものすごい煙をあげながらカツオの藁焼きをやっていたり、鮮度が勝負のカツオの“ちちこ(心臓)”も売っています。大量の生ニンニクをのせて朝からたたきを食べるのも高知ならではです」。香りが格別な四万十の米や甘くておいしい四万十紅茶も知る人ぞ知る地元グルメだ。

 そのほか、石川県のスーパーや市場にも個性的な商品が売られているという。「愛知県もそうですが、高知県や石川県などご当地スーパーがおもしろい街は、お城が立派な城下町が多いんです。お殿様を中心に食文化が栄えたのだと思います」

トークイベントではじゃんけん大会を開催。名古屋のご当地菓子「しるこサンド」をかけた熱い戦いが繰り広げられた

 1月19日には『東海 ご当地スーパー 珠玉の日常食』の発売を記念して、トークイベントが開催された。参加者にはお土産としてあげづけ、糀屋の糀ぷりん、中北薬品の活命茶、マルキのミックスゼリーが配られ、飲んだり食べたりしながらトークに耳を傾けた。スライドを見せながら、著書で紹介しているスーパーや商品のほか、著書にも登場する「名古屋ネタライター」の大竹敏之さんと“なごやめし”を語った。

 愛知集大成となる新刊の発売が決まった頃、夫の東京への転勤も分かった。次はいつ戻ってこられるのか、はたまたずっと東京生活が続くのかは分からないが、約16年間の愛知県暮らしで感じたことは「魅力の多すぎる街」。この本を通して住んでいる方たちに「みんなが住んでいるところはすばらしい食の宝庫。心を豊かにする食材がたくさんあります。もっと自分たちの街の“食”を大切にしてほしい」。そして「東海地方以外の人には、東海の魅力に気づいて遊びに来てほしい。“なごやめし”だけじゃないんです。ご当地スーパーをまわると旅先での楽しみが増え、またいろいろ買って帰宅すると、食のレパートリーが増えます。冷え切った夫婦の食卓のネタにもなりますよ(笑)」。愛知をはじめとする東海エリアの歴史の裏側や文化も知ることができる『東海 ご当地スーパー 珠玉の日常食』を、一家に一冊常備してはいかがだろう。

トークイベントの参加者全員に配られた、手前からあげづけ、糀屋の糀ぷりん(300円、三重県伊勢市)、鈴木製菓の「マルキのミックスゼリー」(1000円、愛知県田原市)、中北薬品の活命茶(133円、名古屋市西区)

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