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銘柄別の専用グラスでベルギービールが飲めるとんかつ屋 365日24時間営業中!

文・イラスト:藤原ヒロユキ

To The Beer Bar~ちょいのみ親父の探訪記~ 第35回「長八」(横浜)

 「長八」は24時間営業・年中無休である。
 看板には“とんかつと和食の店 長八”と書かれている。
 名物は“宮崎県産のSPF豚を一番搾りのキャノーラ油で揚げたとんかつ”なのだ。

 元々は、長者町八丁目にあったので「長八」という名だが、今は九丁目に移った。だからといって「長九」という名に変わったわけではない。そらそうだよね(笑)。
 八丁目の頃は、かなり古いビルの1階だったのだが、今は新しくこざっぱりした内装で、個室なども用意されている。

 とんかつもさることながら、私のおめあては、ベルギービールと日本のクラフトビールである。
 ビールの品揃えは、ポッと出のビアバーが裸足で逃げ出すほどだ。

 私は、初めて「長八」を訪れた時、メニューを見ながら「オルヴァルにしようかなぁ‥‥‥、あっ、でも専用グラスじゃないんだろうなぁ」と呟いていしまったところ、すかさず店員さんに「うちは全部、専用グラスでお出ししますよ」と言われた経験がある。
 ベルギービール専門のバーではないので、侮っていたのだ。
 本当に失礼なことを言ってしまったと後悔している。

 ビール大国のベルギーでは、銘柄ごとに“専用グラス”が明確に決められている。
 三輪一記+石黒謙吾著の『ベルギービール大全』には、150近い銘柄のベルギービールの特徴が専用グラスとともに掲載されており、その多彩さと美しさに心を奪われる。ぜひ、ご覧いただきたい。

 ブドウの品種や産地によってワイングラスを選択する人も、ことビールになるとグラスに無頓着なことが多い。残念なことだ。
 私に言わせると、ビールはワイン以上にグラスを選ぶ必要のあるお酒である。
 麦芽のロースト加減やホップの品種による香りの違い。イーストの醸し出すアロマとフレーバーや原料として使われているフルーツやスパイスのキャラクターも、グラスの形状によっては損なわれてしまうことがあるのだ。

 以前、とある酒場でベルギーのデュベルというビールを、分厚いアメリカン・パイントグラスに注がれ、ひとくち飲んだ瞬間に「! デュベルってこんない味気ないビールだっけ?」と感じたことがある。
 デュベルのグラスは、大きく丸い胴の部分に香りや味わいを貯め、その上のくびれた部分で泡とともに絞り込み、最後に広がった飲み口で発散させる。これでこそ、その魅力が開花するのである。

 独りならばカウンターに陣取り、ヒレカツとベルギービールのオルヴァルさらにはデュベルをオーダーする。
 独りなのにビールを2種類? 最近の私は、こんな頼み方をしてしまうのだ。
 オルヴァルの苦味とホップの香り、デュベルのフルーティーなフレーバーと上品な甘味が、豚肉の旨味と脂に絡み合い、絶妙のペアリングになる。1種類のビールだけに合わせてはもったいない。

 その次は、湘南ビールやコエドビール、富士桜高原麦酒や鬼伝説、ロコビアやビアへるんなど、日本のクラフトビールを頼むとしよう。
 釣りあじの塩焼きや柔らかい豚の角煮を肴にちびちびと飲むのがオツである。

 驚くことに、「プレミアム飲み放題コース」というプランもある。コース料理にプラス3000円でベルギービールもクラフトビールも飲み放題なのだ。えぇっ! 大丈夫? と心配してしまうほどである。
 それも、365日24時間!!

 横浜長者町の「長八」。
 本当に、いい店だ。また訪れたくなる。