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新書ピックアップ(朝日新聞2019年2月9日掲載)

『ミステリーで読む戦後史』 

 ミステリーをひもとくと、作品が書かれた社会や時代状況が見えてくる。戦前の旧習と戦争の影響を色濃く残す横溝正史作品。占領期の影を引きずる松本清張『ゼロの焦点』。水俣病を告発した水上勉『海の牙』。新幹線がもたらす騒音問題を描いた清水一行『動脈列島』……。文学研究者ならではの語り口で、10年ごとに、2010年代まで、ミステリーから戦後史を読む。
★古橋信孝著 平凡社新書・1015円

『安楽死・尊厳死の現在』

 高齢化社会で終活が話題となったり、人生の終幕のあり方に注目が集まったりしている。安楽死が合法化されているオランダなどの事例を紹介しつつ、日本で人生の最終段階の医療に関する法制化が必要だとすればどんな形が望ましいのか、「自律した人間」のみを基本モデルとした医療倫理の限界と新たなあり方について、生命倫理学が専門の静岡大学特任教授の著者が論じる。
★松田純著 中公新書・929円

『ネット断ち』

 たえず他者の反応が気になり、不安とストレスを抱え込むSNSがもたらす「心の漏電」から、どうすれば自分を回復できるのか。著者が提起するのは「沈潜」の時間。スマホを1日最低1時間、身から離そうと提案。毎日の「つながらない1時間」が大切だという。たとえばゲーテの『ファウスト』を読む深い経験は、内面世界を広げ、多くの人格の“森”を育む。スマホ断ちができない現代人への処方箋(せん)。
★齋藤孝著 青春新書インテリジェンス・994円

『解脱寸前』

 副題「究極の悟りへの道」。喜怒哀楽に翻弄(ほんろう)されてしまう自分からどう脱すればいいか。修行僧の著者が瞑想(めいそう)の方法を、極力、仏教用語を使わずにわかりやすく解説する。つまるところは、「日々、人に優しくして己を損なわないよう戒めを守りつつ、内面を観察し、集中や無執着の訓練をする」ことに尽きるという。
★小池龍之介著 幻冬舎新書・842円