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大阪の箕面といえば、滝とモミジと猿と、マサジのクラフトビール

文・イラスト:藤原ヒロユキ

To The Beer Bar~ちょいのみ親父の探訪記~ 第36回「BEER BELLY:ビアベリー」(大阪・ 土佐堀)

 箕面と書いて"みのお"と読む。
 初見でこの地名を読める人はあまり多くないが、ビールファンならば、全員読めるに違いない。もちろん、それは箕面ビールのおかげである。

 箕面市は、大阪府の北部に位置する町だ。
 私は、箕面市の隣の豊中市に生まれ育ったので、箕面には詳しい。
 とはいえ、それは1950年代末~80年初頭の箕面であり、現在の箕面とは若干違っている。

 箕面といえば、"滝"と"もみじ"と"猿"である。
 1960年代、駅前から箕面の滝まで、観光馬車(1983年に廃止)が走っていた。ポクポクと蹄の音が牧歌的だったのを覚えている。
 その当時のなつかしい写真は『箕面市の昭和』に収められており、600点以上の古い写真が当時の箕面を蘇らせる。そこには、私の知る風景もあり、感慨深い。

 箕面の滝は落差が33mで、日本の滝100選のひとつである。秋はもみじが滝に映え、特に美しい。箕面はもみじの名所でもあり、もみじの天ぷら(もみじの葉を揚げた甘味のある菓子)という名物もある。もみじに関しては今も変わらない。

 猿は箕面ビールの王冠にも描かれており、「おさるIPA」や「ボスざるIPA」といったネーミングの限定ビールも販売されている。
 1954年に大阪市立大学の川村俊蔵教授によって餌付けされ、天然記念物にも指定されたが、人を襲う被害などが相次ぎ、現在は山の奥に追いやられてしまった。

 箕面ビールの設立は1996年である。
 1995年に始まった"地ビール"の第一期生といえる。
 現在社長でありヘッドブルワーの大下香緒里さんは、酒販店を営んでいた父の故・大下正司さんからある日、今の醸造所がある場所に連れてこられ、「あしたからここでビールを造るぞ」と言われた。「そんなん知らんわぁ。聞いてへんしぃ」と叫びたくなるほどのサプライズだ。

 その後、地ビールブームとその衰退を乗り越え、ワールドビアカップなど世界的なビア・コンペティションでの受賞を果たし、確固たる人気を得ることとなる。
 正司氏は日本のクラフトビール普及に大きく貢献した人物で、その死を悼む醸造家とビアファンは多い。11の醸造所が、故人をイメージした追悼ビールを醸造した「マサジビールプロジェクト」はその証といえる。

 箕面ビールは直営店も人気である。
 醸造所から徒歩1分の場所にある「ウエアハウス」、大阪市内の天満「ビアベリー天満」と土佐堀「ビアベリー」の3軒だ。
 どの店も素晴らしくて大好きなのだが、足を運びがちなのが土佐堀の「ビアベリー」である。

 というのも、私は1980年代後半、土佐堀の隣の江戸堀に住んでいたからだ。馴染み深い。
この界隈は、古い建物も残っていて、風情がある。
 そのうえ、店の一角でビールが造られているというのも気に入っている。ガラス越しに、醸造設備やビールを仕込んでいる醸造家を望みながら、できたてのビールを飲む。
 贅沢の極みなのである。

 箕面にあるメインのブルワリーと土佐堀のミニブルワリーは、奇しくも私の思い出が詰まった町に存在するのである。
 大阪に暮らした30年間、私は常に箕面ビールとその直営店「ビアベリー」の近くにいたというわけだ。
 まさに、私のSweet homeのビールであり、店なのである。

 土佐堀の「ビアベリー」。
 本当に、いい店だ。また訪れたくなる。