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第160回芥川賞・直木賞贈呈式 3作家、個性豊かにスピーチ

(右から)芥川賞の上田岳弘さん、町屋良平さん、直木賞の真藤順丈さん

流れに反抗していたい 上田岳弘さん

 上田さんは「文学賞に限らず、新しい作家や作品を顕彰することはある意味でシステム。参加する人間を従わせることにもなる。流れに反抗するのが作家である。反抗していたい。受賞作のタイトルは『バベルの塔』の提唱者。塔を作ることは神への抵抗であり、ニムロッドは作家そのもの」と話した。

傲慢な思いと向き合う 町屋良平さん

 町屋さんは「登場人物は、ボクシングがただ好きで、続けていきたいという気持ちだけで壁にぶつかる。自分が小説を続けていくことについても、もう一度考えないといけないという気持ちが体の中にあって、それが言葉になったのだと思いました。この先も、傲慢(ごうまん)さとしっかり向き合って書き続けていきたい」。

つかみ取るように書く 真藤順丈さん

 受賞決定時のジャージー姿とは異なり、スーツ姿で登壇した真藤さんは「会見後ジャージーが6着くらいお祝いで送られてきた。すげえな直木賞、と思った」と会場の笑いを誘った。
 受賞前の執筆活動は「惰眠と果報待ちの日々だった」。「戦果アギヤー」と呼ばれる、基地から物資を奪った受賞作の登場人物になぞらえて、今後は「間違いを恐れず、フェンスを越えて小説をつかみ取りにいくような書き手でありたい。書くことで新しい時代の書き手の肥やしになれたら」と話した。
 贈呈式の3日後には、米軍普天間飛行場の移設計画をめぐり、辺野古の埋め立ての是非を問う沖縄県民投票が控えていた。「この間イベントで沖縄に行ったとき、賛成か反対か明確に声を上げてほしいと述べてきた。もし、示された民意と正反対の施策が進められてしまったとしても、以前と以後とでは違う世界が待っていると思っている」(中村真理子、宮田裕介)=朝日新聞2019年2月27日掲載