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新書ピックアップ(朝日新聞2019年3月2日掲載)

『沖縄の聖地 御嶽(うたき)』 

 副題は「神社の起源を問う」。御嶽とは、沖縄の各地にある聖地。深い森のなかの祈りの空間には何もないところが多い。その「何もなさ」は「或る強い宗教的意志のあらわれとさえ言える」と著者はいう。沖縄から八重山諸島の御嶽に魅了された著者は聖なる森の系譜を各地に訪ねてきた。日本の古神道との関連から、南方から朝鮮半島へ連なる交易の道との関わりまで、長い時間をかけて問い、時代による移ろいを見つめてきた信仰の形をたどる。
★岡谷公二著 平凡社新書・864円

『フロムに学ぶ「愛する」ための心理学』

 フロイト左派の精神分析学者による著書『愛するということ』に沿って、愛は技術であり、理論を学び習練を必要とするという論を軸に、本能が壊れてしまった人間の孤独、資本主義経済の交換の原則、愛のルーツとしての母性愛などから「本当の愛とは何か」を追究。非婚、DV、ひきこもりを切り口に、社会的視点から愛の本質に迫る。
★鈴木晶著 NHK出版新書・842円

『発達障害グレーゾーン』

 (特別協力OMgray事務局) 発達障害者と定型発達(健常者)の中間に位置するグレーゾーンの人たちに焦点を当てた一冊。フリーライターの著者が、当事者インタビューに加え、立ち上げから間もない当事者会、発達障害傾向のある人たちの就職支援を行う会社の取材も。周囲からの理解を得にくい苦労や、それでも社会の中で生きていくおのおのの工夫などを紹介。
★姫野桂著 扶桑社新書・886円

『僕たちはもう働かなくていい』

 「面倒な仕事」はAI(人工知能)やロボットがこなし、人間は「好きなこと」だけに没頭できるようになる、という仕事論。本書の読みどころは、松尾豊、石黒浩、古田貴之らAI研究者に自ら取材し、それを平易に紹介する部分だ。今、AIやロボットがどこまで進化し、どんな課題に取り組んでいるのかを概観できる。
★堀江貴文著 小学館新書・886円