昔から縄文文化に興味があったのですが、この本に出てくる江戸時代の京都の絵師たち、曾我蕭白(しょうはく)や伊藤若冲、長沢蘆雪(ろせつ)の作品には、エネルギーがほとばしる縄文力に似た何かを感じて、目を奪われていました。具体的に何にひかれているのかわからなかったけれど、20代後半に友人が教えてくれたこの本を読んで、すべてが腑(ふ)に落ちました。同じ時代、同じ町で生きた絵師たちが、人生をかけて体ごとぶつかるように絵を描いていた魂の連なりを「奇想の系譜」という流れでくくると見えてくる。みな「因襲(いんしゅう)の殻を打ち破る、自由で斬新な発想」にあふれている。この本は日本美術にはまるきっかけとなったバイブルです。
特に蕭白は感動じゃなくてショックでした。高価な顔料で描いた絵もあれば、墨で乱暴に描いた絵もある。幾通りもの画風があり、表現者として尊敬します。生き様もとんでもない。放浪の旅で行き倒れ、助けられた家で絵を描いた。自由な生き方に男としてあこがれます。
ちょうど「奇想の系譜展」が開催中で見てきました。「わぁー」って声が出てしまった。仕事が忙しいほど、活力や想像力を得たいという反動は大きくなるのです。絵師から何を学べるのか、自分はどう生きるのかまで突きつけられる本です。読めば気力がわき上がってきます。(聞き手・久田貴志子)=朝日新聞2019年3月2日掲載
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