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占領軍の飛行場だった公園がおしゃれエリアに 新たなブルーパブも登場

文・イラスト:藤原ヒロユキ

To The Beer Bar~ちょいのみ親父の探訪記~ 第39回「クラフトビアベース ガーデン」(大阪・京町堀)

 1980年代後半、私は大阪市西区江戸堀に住んでいた。
 なにわ筋とあみだ池筋の間、土佐堀通りに面したマンションで暮らしていた。
 向かいに三井倉庫があり、その北側を流れる土佐堀川にかかった歩行者専用の小さな橋を渡ると、ロイヤルホテル(現リーガロイヤルホテル大阪)の駐車場だった。ホテルの1階のバーは午前11時からやっていたので、歩いてよく飲みに行ったものだ。昼間っからね(笑)。

 「リーチバー」という名のそのバーは、日本の民藝活動に大きな足跡を残したイギリス人陶芸家バーナード・リーチの思いを建築家・吉田五十八が具現化した空間である。木、石、竹など自然の素材がうまく使われていて、落ち着いた雰囲気だ。リーチはもとより棟方志功、河井寛次郎、濱田庄司などの作品が飾られ、BGMがないのも心地よい。

 1887(明治20)年、香港で生まれたリーチは、幼い頃に京都や彦根で育ったという経歴を持ち、一旦は帰英するものの何度も来日し高村光太郎や濱田庄司や柳宗悦などと交流を重ねた。日本の工芸=クラフトのキーパーソンと言っていい。
 『バーナード・リーチ日本絵日記』は1953(昭和28)年〜54年の1年8カ月に及ぶ日々の記録で、日本全国の窯元を訪ねて陶芸家と交流したり、自ら焼き物を作ったりする様子がスケッチや写真とともにまとめられている。当時リーチはすでに60代後半だったが、その行動力と視点の鋭さには驚かされる。あやかりたいものだ。

 江戸堀のマンションのすぐ南に行くと住所は“西区京町堀”に変わり、花乃井中学、花乃井公園、中天游邸跡があり、3分も歩くと靱(うつぼ)公園にたどり着く。
 靭とは「矢を入れる筒型の容器」を意味し、第二次世界大戦後には占領軍の飛行場として使われた時期もあったほど、東西に細長い公園である。南北が約150mなのに対して東西は約800mある。東が四つ橋筋、西があみだ池筋に接していて、中央をなにわ筋が南北に走り、これをもって「東園」と「西園」に分けられている。
 東園はケヤキ並木やバラ園が広がり“憩いの場”としての趣があり、西園はテニスコートが並ぶ“スポーツの場”といったイメージである。ちなみに、このテニスコートこそ今をときめく大坂なおみがテニスを始めた場所である。

 そんな靭公園界隈の江戸堀や京町堀は、私が引っ越したのち「おしゃれなエリア」に変わっていき、小洒落たカフェやショップが並び始めたとのことである。以前は、定食屋や酒屋の角打ちなどしかなかったのだが(笑)、梅田にも難波にも出やすいうえに(私はどちらにも自転車で出かけていた。10〜15分も走れば着いてしまう距離だ)、靭公園といった緑あふれる空間があるので、快適な場所である。大阪で暮らすならお薦めの場所だ。

 そんなエリアにあるのが「クラフトビアベース」系列のひとつ「クラフトビアベース ガーデン」である。
 「クラフトビアベース」は、第1号店がウエスティンホテル大阪の近くの北区大淀南に2012年にオープンし、当時はまだ珍しかった「酒販+ビアバー=クラフトビールが買えて飲める店」として人気を博した。冷蔵室に並んだビールを買って帰ったり(その場で飲むこともできる)、タップから注がれるビールを飲んだりできるお店である。
 その後、大阪駅前第1ビルに「クラフトビアベース バド」、阪神百貨店に「クラフトビアベース シード」、京町堀に「クラフトビアベース ガーデン」、大淀南に「クラフトビアベース ブランチ」と増えていった。

 そして、このなかのひとつ「クラフトビアベース ガーデン」が、2018年末に「ビアバー」から「ブルワリー+ビアバー=ブルーパブ:ブルーイングラボ」に生まれかわったのである。ビールが飲める店から、ビールを造る+飲める店になったのだ。
 実は、この“生まれ変わり計画”に関しては、オーナーの谷和さんに計画当初から相談を受けていて、微力ながら(本当に微力ですが‥‥‥)お手伝いをさせていただいたという経緯がある。

 30年以上前に暮らしていたエリアの「クラフトビアベース ガーデン」の生まれ変わりに、関われたことは非常に感慨深い。
 もし、今もこのエリアに住んでいたら、「クラフトビアベース ガーデン」に金曜日も土曜日も昼間っから行っちゃうんだろうなぁと思う。自転車ならあっという間だし。
 って、飲酒運転は自転車でも御法度なので、リーチバーに通っていた時のように歩いていくだろうけどね(笑)。

 大阪京町堀の「クラフトビアベース ガーデン」。
 本当に、いい店だ。また訪れたくなる。