驚きの連続を体験できるのが今村昌弘著『魔眼の匣(はこ)の殺人』(東京創元社・1836円)だ。鮎川哲也賞や本格ミステリ大賞を受賞した『屍人荘(しじんそう)の殺人』の続編。今回も大学2回生の剣崎比留子が1年後輩の葉村譲と共に、事件の謎に挑む。
舞台は、人里離れた「W県I郡旧真雁(まがん)地区」。そこには「魔眼の匣」と呼ばれる元超能力研究所があり、予言者のサキミという老女が暮らしている。サキミは「十一月最後の二日間に、真雁で男女が二人ずつ、四人死ぬ」と予言する。住人は恐れおののいてその土地を離れるが、剣崎と葉村、サキミを含めて11人が残される。どの人物もいわくありげで……。
本当に4人が死ぬのか。アガサ・クリスティの小説を思わせる減っていく人形は、何を意味するのか。『屍人荘の殺人』でも重要な存在だった謎の組織「班目(まだらめ)機関」とは何か。比留子の推理が冴(さ)えわたるが、とどめは終章。こんなとんでもない結末は予測できなかった。やられた。さらなる続編もありそうで、今から楽しみだ。(西秀治)=朝日新聞2019年3月16日掲載
編集部一押し!
- インタビュー 恩田陸さん「spring」 バレエの魅力、丸ごと言葉で表現 朝日新聞文化部
-
- ニュース 本屋大賞に「成瀬は天下を取りにいく」 宮島未奈さん「これからも、成瀬と一緒なら大丈夫」(発表会詳報) 吉野太一郎
-
- インタビュー 北澤平祐さんの絵本「ひげが ながすぎる ねこ」 他と違うこと、大変だけど受け入れた先にいいことも 坂田未希子
- インタビュー 「親ガチャの哲学」戸谷洋志さんインタビュー 生まれる環境は選べない。では、どう乗り越える? 篠原諄也
- 小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。 【特別版】芥川賞・九段理江さん「芥川賞を獲るコツ、わかりました」 小説家になりたい人が、芥川賞作家になった人に聞いてみた。 清繭子
- BLことはじめ BL担当書店員が青田買い!「期待のニューカマー2023」 井上將利
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(後編) 辞書は民主主義のよりどころ PR by 三省堂
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(前編) 「AI時代」の辞書の役割とは PR by 三省堂
- インタビュー 村山由佳さん「二人キリ」インタビュー 性愛の極北に至ったはみ出し者の純粋さに向き合う PR by 集英社
- 朝日ブックアカデミー 専門外の本を読もう 鈴木哲也・京大学術出版会編集長が語る「学術書の読み方」 PR by 京都大学学術出版会
- 朝日ブックアカデミー 獣医師の仕事に胸が熱く 藤岡陽子さんが語る執筆の舞台裏 「リラの花咲くけものみち」刊行記念トークイベント PR by 光文社
- 朝日ブックアカデミー 内なる読者を大切に 月村了衛さんが語る「作家とはなにか」 「半暮刻」刊行記念トークイベント PR by 双葉社