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「ちょいと一杯」では収まらない!? そば屋で樽詰めのクラフトビール

文・イラスト:藤原ヒロユキ

To The Beer Bar~ちょいのみ親父の探訪記~ 第41回「TOWA (トワ)」(東京・上野)

 そば屋でちょいと一杯。なんてオツだねぇ。
 板わさや焼き海苔を肴に日本酒をチビチビと飲んだあと、もりそばをツルッとたぐってサッと帰る。てのが粋な振る舞いとのことだ。

 私は日本酒も好きだが、やはり“旨いビール”が飲みたい! と思う。
 できれば、多彩なビールの中から料理や好みに合った銘柄を選ばせていただきたい。
 なんていう私のわがままを叶えてくれる、素敵な店が上野の「TOWA」である。樽詰めのクラフトビールが15種類も揃った“そば屋”なのだ。

 そば屋で酒を飲む文化は、江戸時代に始まったと聞く。
 当時は今で言う「居酒屋」といった店は少なく、仕事帰りの職人達はそば屋に寄って酒を楽しんでいたとのことだ。
 さらには、夜に町内を売り歩いた屋台のそばも人気があったという。
 落語「時そば」でも有名だ。

 屋台でそばを食べ終わった客が、十六文の勘定を小銭で1枚ずつ払い「一つ、二つ、三つ・・・・・・七つ、八つ」ときたところで「おやじ、いま“何どき(何時)”だい?」と訊く。
 そば屋が「へい、“九つ”で」と答えると、客はそれに続き「十、十一、十二、十三・・・・・・十六」と、1文ごまかして帰る。
 これを見ていた男が、翌晩に真似をするのだが、時間が早くて「一つ、二つ、三つ・・・・・・八つ。いま何どきだい?」「へい“四つ”で」「五つ、六つ、七つ・・・・・・」と逆に多く払ってしまうという噺である。

 稲田和浩著『食べる落語――いろはうまいもんづくし』を読むと、「時そば」だけでなく、「青菜」「千両みかん」「七度狐」「目黒のさんま」「饅頭こわい」「ちりとてちん」など、食べ物が出てくる落語が数多くあることがわかる。
 私は、超のつく落語ファンとは言わないまでも、年に数度は演芸場や寄席に足を運ぶぐらいの落語好きである。寄席の帰りには、無性に和食が食べたくなる。

 私は以前から「和食には、味や香りのしっかりとしたクラフトビールが合う」と思っているので、TOWAで板わさとふき味噌を肴にクラフトビールを、パイントグラスで一つ、二つ、三つと杯を重ねることになる。
 美味しいビールと美味しい肴があるとついつい長く居座ってしまうことになるのだが、そば屋で深酒なんてのは粋じゃない。

 酒に卑しい私は、飲みだすとついつい長っ尻になり、野暮の極みでよろしくない。
 そろそろ、おいとましなければなるまい。

 「お勘定をおねがいします」
 「****円です」
 「あ、小銭が溜まってるんでこれで払わせて。1、2、3、‥‥‥8、いま何時?」
 「9時4分です」

 あっ、時計、デジタルなのね。
 おあとがよろしいようで。デンデン。

 上野の「TOWA」。
 本当に、いい店だ。また訪れたくなる。