1. HOME
  2. 書評
  3. 「まともがゆれる」 タフじゃなくてもいい社会に

「まともがゆれる」 タフじゃなくてもいい社会に

まともがゆれる 常識をやめる「スウィング」の実験 著者:木ノ戸 昌幸 出版社:朝日出版社 ジャンル:福祉・介護

価格:1685円
ISBN: 9784255010977
発売⽇: 2019/01/21
サイズ: 19cm/223p

「べき」や「ねば」といった既存の仕事観・芸術観に疑問符を投げかけながら様々な創造的実践を繰り広げている障害福祉NPO法人スウィングの実践を紹介する。稲垣えみ子の寄稿、利用…

評者:野矢茂樹 / 朝⽇新聞掲載:2019年03月30日

まともがゆれる 常識をやめる「スウィング」の実験 [著]木ノ戸昌幸

 あなたは勤勉でタフですか? 私は違う。でもけっこうまじめなので勤勉に仕事しようとして、疲れてしまう。そしてしょっちゅう軽く鬱っぽい気分と苛立ちに襲われる。
 どうすればいいだろう。とりあえず目指すゴールは見えている。第一に、勤勉じゃなくてもタフじゃなくてもいいんだということを徹底的に腹に落とすこと。第二に、勤勉じゃなくてもタフじゃなくてもやっていける社会にすること。だけど、そこにどうやって辿りつけばよいのかは、さしあたり見当もつかない。
 木ノ戸さんはそこで「障害者」と呼ばれる人たちに出会った。閉塞感に押しつぶされそうになっていた彼は、なんとか息ができるところに顔を出そうともがいていた。私はこの本を、そんな木ノ戸さんが救われていく物語として読んだ。
 木ノ戸さんは「障害者」たちとともにユニークな活動を続けている。勤勉じゃなければいけない、タフじゃなければいけない、だから、がんばらなくちゃいけない――そんなこだわりから解放された場を作ることで、彼らは笑顔と活気を取り戻していく。
 いまの社会では障害者はまさに障害を背負った弱者である。だけど、私たちを疲れさせ、重たくしているのは、彼らを「障害者」としてネガティブに位置づける社会の規範と価値観なのだ。だとすれば、まず私たちが変わるために、彼らをネガティブに見ることをやめなければいけない。彼らのためにではなく、私自身のために。
 なんか、生まじめな書評になってしまったが、それは本書が生まじめな本だからだ。でも、生まじめにいいかげんで、ゆるゆるの本だ。紹介されるとんでもないエピソードや随所に挿入される彼らの手書きの詩や絵やイラストに、私はわははと喜び、すげえと感嘆した。?がゆるみ、脱力し、同時に、どこか本来の場所から力が湧いてきそうな気がしてきた。
    ◇
きのと・まさゆき 1977年生まれ。引きこもり支援や遺跡発掘などの活動を経てNPO法人スウィング理事長。