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ドメスティックな料理とインターナショナルなビール 「いまどきの京都らしい」組み合わせ

文・イラスト:藤原ヒロユキ

To The Beer Bar~ちょいのみ親父の探訪記~ 第42回「髙野麦酒店 TAKANOYA」(京都・蒔絵屋町)

 そうだ京都、行こう。
 JR東海の有名なCMである。
 平安建都から1200年を数える1993年に始まったキャンペーンだ。

 美しい京都の風景と長塚京三(2019年春からナレーションは柄本佑に変わる)の穏やかな語り、そして「私のお気に入り」の軽快なメロディーが流れるCMだ。
 なんて言うと、「あの曲があんたのお気に入りかどうかなんて訊いてないよ」と叱られそうだが、CMで流れている曲のタイトルが「私のお気に入り」なのである(笑)。

 ミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」でジュリー・アンドリュース扮する家庭教師が、子供達に「悲しくて泣きたい時には“私のお気に入り”を思い出しましょう」と唄う曲が「私のお気に入り:My Favorite Things」である。

 「サウンド・オブ・ミュージック」は、第二次世界大戦が始まらんとするオーストリアのザルツブルクに暮らす厳格な父と自由奔放な家庭教師が織りなす、実話をもとにしたストーリーだ。
 主人公のモデルとなった家庭教師マリア・フォン・トラップ自身が書いた本『サウンド・オブ・ミュージック』を読むと、映画の内容以外にも面白いエピソードがいくつかある。170分という、長めの映画だが、やっぱ、そこには収まりきらないことがあるということか。

 ちなみに、歌詞の中での「私のお気に入り」は、バラの花びらにのった雨雫、子猫のヒゲ、ピカピカのケトル、暖かいウールの手袋、リボンのかかった茶色い紙包み、鼻とまつげに積もる雪、クリスピーなリンゴの焼き菓子、ヌードル添えのカツレツなどがあげられている。

 さて、私のお気に入りのひとつといえば、京都の「髙野麦酒店 TAKANOYA」である。
 「髙野麦酒店 TAKANOYA」がなぜお気に入りなのか?
 まずは、海外のクラフトビールを和食ベースのお料理と楽しめることだ。厚揚げを肴にアメリカのクラフトビールを。なんて、ドメスティック&インターナショナルな組み合わせが、国際的な観光都市である“いまどきの京都”らしい。

 さらに、築80年の町家を改装したという、店内の雰囲気も素晴らしい。高い天井と太い梁が印象的だ。カウンターに座ると、正面に見える壁には菱形が6枚組み合わさった和柄「桑の葉文様」がポップな色使いのタイルで描かれている。

 そして、フレンドリーかつ丁寧なスタッフの接客が心地よい。
 どれも、「対極のものが出会うことによって生じる素敵な相乗効果」に他ならない。
 「厳格」と「自由奔放」が出会ったサウンド・オブ・ミュージックのように。

 特に悲しいことや泣きたいことがあったわけではないが、“私のお気に入り”を味わいたい気分だ。
 それはバラの花びらにのった雨雫やピカピカのケトルではなく――ホップの香るアメリカンIPAと蛸山葵、モルトの豊かなイングリッシュ・ブラウンエールと味付け煮卵、スパイシーなベルジャン・セゾンと丹波地鶏つくねと聖護院大根の酒粕煮など。一見ミスマッチとも思えるペアリングによる味覚の融合である。

 なんて考え出したら、もう居ても立ってもいられない。
 そうだ「髙野麦酒店 TAKANOYA」、行こう。

 京都・蒔絵屋町の「髙野麦酒店 TAKANOYA」。
 本当に、いい店だ。また訪れたくなる。