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新書ピックアップ(朝日新聞2019年7月20日掲載)

『虐待された少年はなぜ、事件を起こしたのか』 

 2015年の川崎の男子中学生殺害事件をルポした著者は、「心の闇」の背景を探ろうと少年院を巡り、少年・少女たちや矯正教育に関わる人に取材。虐待家庭で感情が「未分化」のまま育った少年たちへの矯正教育や、民間の更生保護施設の取り組みも紹介。
石井光太著 平凡社新書・1058円

『ガザの声を聴け!』

 著者はパレスチナ難民を医療や教育、社会福祉で支援する国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の保健局長で医師。ガザではイスラエル政府による長年の経済封鎖下で失業率は高く、若者の自殺も増えている。「天井のない監獄」の先は見えず、若者たちは人間の尊厳を求める。
★清田明宏著 集英社新書・842円

『マキァヴェッリ』

 手段を選ばず権謀術数を巡らす人をマキァヴェリストと呼ぶが、マキァヴェッリの実像は? フィレンツェ生まれのルネサンスの思想家の生涯と思想をたどる。冗談好きで、家族や友人を大切にした人間味ある面も紹介、誤解を受けてきた人物像と『君主論』の政治思想に迫る。
★鹿子生(かこお)浩輝著 岩波新書・929円

『天才の思考』

 故高畑勲氏と宮崎駿氏、スタジオジブリの天才の個性の衝突が鮮烈。意見の対立や時間との闘いを経てヒット作を生んだプロデューサーの著者が語る。ジブリの20作の秘話を掲載。座談会では、高畑氏の作品にかける一途さや、子どもたちの変化や感性に鋭敏な宮崎氏の素顔を引き出す。
★鈴木敏夫著 文春新書・1296円

『日本銀行「失敗の本質」』

 日銀の異次元緩和とアベノミクスを6年間取材してきた朝日新聞編集委員が、その政策の危うさを、日本軍の失敗研究をヒントに考察。学者やエコノミストが実名で政策を批判しにくくなった状況を肌で感じ、自由にものがいえない抑圧的な空気が充満する社会に警鐘を鳴らす。
★原真人著 小学館新書・907円