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子どもたちへ、夏休みにこそおすすめしたい本8冊

☆「天才ルーシーの計算ちがい」(講談社)

 12歳のルーシーは雷に打たれて以来、どんな難問でも解ける数学の天才になった。ある日ルーシーは、親代わりの祖母から、ホームスクールを卒業して学校へ行くように言われるのだが、極端な潔癖症だし変な癖もあるのでいじめを受け、すぐに学校が嫌になってしまう。そんなルーシーが、数学以外の世界でも自分の居場所を見つける物語=小学校高学年から(ステイシー・マカナルティ著、田中奈津子訳、1500円)

★「漂流物」(BL出版)

 ある日男の子が、浜辺に打ち上げられた水中カメラを拾う。入っていたフィルムを現像してもらうと、ぜんまい仕掛けの魚や、居間でくつろぐタコなど不思議な写真がいっぱい。知らない子が手に写真を持っている一枚も。それを虫眼鏡や顕微鏡で調べて、男の子はまたびっくり。様々な子どもたちがカメラを介してつながっていく文字なし絵本。自由にお話を想像できるのも楽しい=小学校低学年から(デイヴィッド・ウィーズナー作、1800円)
 【翻訳家 さくまゆみこさん】

☆「あららのはたけ」(偕成社)

 横浜から山口に引っ越してきて、おじいちゃんに教わりながら畑をはじめることになった小学生えり。畑のしごとははじめてだったので、そこで出会った自然のふしぎについて横浜に住む親友のエミに手紙で知らせることに。えりとエミの手紙のやりとりには、子どもたちのいきいきとした日常がおしゃべりのように書かれていて読みやすい。2人の思いは幼なじみで不登校のけんの心に届くのか=小学校中学年から(村中李衣作、石川えりこ絵、1400円)

★「ツバメ号とアマゾン号」(岩波少年文庫)

 この物語を読む度に、少年時代に子どもたちだけでいかだを作り、川へ浮かべて遊んだ時のドキドキ感がよみがえってくる。ウォーカー家の4人きょうだいは、夏休みに小さな帆船「ツバメ号」を作る。それを湖に走らせ探検をしたり、無人島でキャンプをしたり、アマゾン海賊と名乗る姉妹と対決したり……楽しい「ごっこ遊び」の世界が見事に描かれている。夏休みの解放感をたっぷり味わいたい作品=小学5、6年生から(アーサー・ランサム作、神宮輝夫訳、上下各760円)
 【ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん】

☆「つながる」(アリス館)

 なつっこい子どもの笑顔に誘われて本を開くと、極寒のシベリアやアマゾンの狩猟民族など、世界各地の子どもたちの暮らしや気持ちに触れられる。旅する写真家が出会った人々は、みんな何かとつながるための「根」を持っていた。自然、歴史、記憶、家畜、家族、友達、子孫……つながる地球のいのちと、自分の「根」に思いを巡らせたい=小学校中学年から(長倉洋海写真・文、1400円)

★「ジャングル」(岩崎書店)

 見返しからびっしり書かれたメモとスケッチ。科学絵本の第一人者の作者といっしょに、コスタリカのジャングルへ冒険に行こう。車に道具や食料を積んで凸凹道を6時間。巨大な植物、湿った空気、甲高い鳥の声の臨場感。動物や昆虫をつぶさに観察する目を共有し、発見に興奮し、自炊も共にする。果てしない未知の存在に胸膨らむ=小学校中学年から(松岡達英作、1400円)
 【絵本評論家・作家 広松由希子さん】

☆「まよなかのせおよぎ」(講談社)

 ちっとも眠れない夜、女の子がふと窓の外をみると、ゆうゆうと赤と白のしましまのスイムウェアの人が空中を背泳ぎしています! 夢中でついていくと、なんだかとっても気持ちがよくって……。魚眼レンズをのぞいているかのような構図が、不思議な世界へ誘います。やわらかな色鉛筆で描かれる美しい夜は心地よく、寝苦しい夜でも優しい夢を見せてくれそうです=4歳から(近藤未奈作、1300円)

★「わたしちゃん」(小峰書店)

 まりはお父さんの仕事の都合で新しい町に引っ越しました。大好きな海も近くにないし、友達だっていない。夏休みだっていうのに本当につまらない! どうしてもどこかにでかけたくなって、公園にむかうと、「わたしちゃん」という女の子に出会います。2人はあっという間に仲良くなって一緒に遊ぶのですが……。新しい友達の存在で新生活のゆううつは一気に吹き飛びます。一生忘れない夏の不思議な一日のおはなし=小学校低学年から(石井睦美作、平澤朋子絵、1100円)
 【丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵さん】=朝日新聞2019年7月27日掲載