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梨屋アリエさん「きみの存在を意識する」読書会 中学生ら「他人の生きづらさ、知った」

読書会では、自分の体験を交えながら考えを述べ合った

障害、配慮されず

 東京都内で今月開かれた読書会には、中学生から大学生までの14人が全国から参加した。

 梨屋さんと同様に文字を書くことに障害があると明かした中学2年の男子生徒は、付箋(ふせん)や蛍光ペンの線でいっぱいになった新刊を持参した。
 「学校では、合理的な配慮がなかなか認められずに、苦しんでいる人が結構いる」
 読み書きに困難がある障害「ディスレクシア」は学習障害の一つ。それを補うために学校でパソコンを使おうとしても、「特別扱い」になるとの理由で先生が認めない場合がある、と男子生徒は話した。「視力が悪い人が眼鏡をかけてちゃんと黒板が見られるようになるのと同じなのに」
 同書では、こうした障害のほか、女性にも男性にも分けられたくない子やにおいへの過敏症が理解されず別室登校になる子らが、お互いに影響を与え合う姿を描く。
 参加者からは、「私は読書が得意で『本を読めない』というのがよく分からなかった。いろいろな人がいることを知れて、よかった」「もしかしたら本当は周りにいたのに、『ただ勉強ができないんだ』と思っていたかも」といった気づきの声も相次いだ。
 物語には、障害のある生徒の気持ちをくみ取らない担任も登場する。大学1年の田上明日佳さんは、この担任の対応を「おかしい」とはっきり指摘する生徒について語った。「私が中学生のとき、こんな考え方はできなかった。こういう考え方ができる人が周りにいたら、配慮が必要な人も救われると思った」

「生きてようね」

 終盤には、中学生の「死にたくなるほど」の生きづらさに対して、「生きてようね」とのメッセージがつづられる。
 高校3年の伊澤響子さんは「(私も)しんどいな、どうして他の子と同じじゃないのかな、と思うときがある」。でも、と続けてこう笑った。「とにかく息をしていればいいかな、息しているのもえらいじゃん、みたいに思っています」

「みんな違っていい」考え続けて 著者の梨屋アリエさん

 2009年から12~19歳を対象に、読書会を30回以上開いてきました。今回も、自分の身近な世界とつながっている小説として読んでくれてうれしかった。
 読書会を開くのは、子どもたちが学校や家とは違うところで、本を通して人とつながる場を提供したかったからです。同じ本を読んでも、人によって感動する場所も読み方も全然違う。
 自分とは違う人と多角的に本を読むことは「いろんな人がいる」という理解につながり、子どもたちがこれから生きていく上での宝物になります。
 学校で「みんな違って、みんないい」と教えるから、子どもは言葉としては覚えている。だけど「じゃあ、どうするの?」というと、分からない。その先を考え続けていくことが大事だと思います。
 私は発達障害への周囲の不適切な関わりからうつ病のようになり、「死にたい」と思った時期があります。中学生ぐらいのときでした。「死ぬな」と言われるのも、「生きろ」と言われるのも苦しかった。息苦しいまま大人になって実感したのが、「死ななければ、生きていける」。そんな思いも、本の中に込めました。(中村靖三郎)=朝日新聞2019年8月31日掲載