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吉田修一「アンジュと頭獅王」 現代の新宿から中世への跳躍

 吉田修一さんの新作『アンジュと頭獅王』(小学館・1320円)は、森鷗外「山椒大夫」の原話になった中世の説経節をベースにした小説だ。現代語訳から一転、語り口はそのまま、ユーモアをたっぷり含みながら時間を跳び越える。
 本の最後に「協力 パークハイアット東京」とある。実は、東京・新宿にあるホテルの開業25周年に合わせた書き下ろし。リクエストは、パークハイアット東京「で」書くこと。吉田さんは5月に1週間滞在して構想を練った。
 吉田さんは最初しゃれた現代劇を考えたが、ホテルのコンセプト「タイムレス」から古典にたどり着いたという。セリフの一部が大きな活字で1ページに収まるレイアウトが印象的。編集者の恩田裕子さんは「見得のイメージ」と話す。『国宝』で歌舞伎をテーマにしたことも生かされた。
 客室には、特装版(非売品)が置かれている。(滝沢文那)=朝日新聞2019年10月19日掲載