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宮内悠介さんが秘かに大好きだった音楽「ファイナルファンタジーⅤ」 ゲーム遊べなくても想像を膨らませた

 音楽は聴くよりも作るほうが早かった。小さいころ、電池で動くオルガンを買ってもらい、そして母から五線譜の書きかたを習った。弾きたい曲が特にないので、自分で作曲をして、五線譜に残していく。何か根本的に間違っているような気もするが、とにかくそんなふうにして、ぼくと音楽は出会ったのだった。

 五年生のときにMSXというコンピュータを買い与えられてからは、その内蔵音源で曲を作るようになった。将来は作曲家になりたいと考えていた。辛いことがあった日は、ぼくには音楽があると自分に言い聞かせた。
 高校に進学してからは、半数の人間がなんらかの形で音楽をやっているという奇跡的なクラスの一員となった。出席番号で一つ違いのクラスメートが、当時のクラブ音楽のシーンに詳しく、ぼくは彼から多くを教わった。

 いまも宝物になっているカセットテープがある。ぼくが自作曲を録って友人に貸したら、その友人が自分の曲を末尾につけ加えた。それがまた別の友人の手に渡り、また曲が増える。こうして、一種のコンピレーション・アルバムができあがった。繰り返すが、カセットテープだ。いま、自分で書いて自分で驚いている。このテープは数年前、業者に頼んでCDに焼いてもらった。

 では、そのころ大好きだった音楽はなんだろう。ドラムンベースというジャンルが流行していた九十年代のことだ。それらしいタイトルはいくつか思い浮かぶ。ほんの少しマイナーどころの、「わかっている」感じがするアーティストやアルバムだ。それを挙げたい誘惑にかられるが、ただ、そのころぼくは秘密を抱えていた。常に最先端の音楽を発掘してくる友人たちの前では、なんとなく恥ずかしい気がして、口にできなかったこと。

 実のところ、ぼくはゲーム音楽が大好きだったのだ。

 家の方針でゲーム機を買ってもらえなかったので、かわりに、皆がやっているようなゲームのサウンドトラックを買って、それを聴きながら自分のなかで想像を膨らませた。それこそ、「ドラゴンクエスト」とか「ファイナルファンタジー」とかのだ。

 そこで今回は、「ファイナルファンタジーⅤ」オリジナル・サウンド・ヴァージョンを挙げたい。ゲーム音楽はほかにも名盤が多くあるはずなのだけれど、結局のところ、実際のゲーム画面を想像しながら一番狂ったように聴いたのが、このアルバムだった。

 その後ぼくは晴れて一人暮らしとなり、念願のゲーム機も入手したのだけれど、昔やっていたゲームは何かと振り返ると、不思議と、やってもいなかったはずの「ファイナルファンタジーⅤ」が真っ先に浮かぶのだった。