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ボウフラから銀河まで等しく生命を宿らせる「ちび竜」など 「子どもの本棚」オススメ3冊

「ちび竜」

 小さな粒から生まれた「ちび竜」。気づいたら、ボウフラとぴんぴん踊っていた。「ここはどこ?」「ぼくはだれ?」。周りの生きものに教わり、励まされ、神通力を身につけるための「クンレン」を重ねる。水たまりを飛び出し、タンポポの綿毛と舞い、空ではトンボに、水ではフナに、土ではモグラに師事し、どんどん大きな「でか竜」に成長していく。山の夕立も海の大波も、虹も霧も雷も作れるようになり、今では……クライマックスの観音開きが圧巻。
 白黒に抑えのきいた着彩で、ボウフラから銀河まで等しく生命を宿らせる画面。見えない粒から宇宙を包む存在まで「ぼく」であり、「きみ」にもつながることを、ユーモアとあたたかな説得力で伝える。(工藤直子文、あべ弘士絵、童心社、税抜き1700円、5歳から)【絵本評論家・作家 広松由希子さん】

「故郷の味は海をこえて 『難民』として日本に生きる」

 日本は難民受け入れ数がとても少ない。それでも、戦争や人権侵害によって命が危うくなり、日本に逃げて来る人はいる。その人たちを、同じ人間として迎えるにはどうすればいい? 著者は、シリア、ミャンマー、バングラデシュ、ネパール、カメルーンなどから逃げて来た人に会い、彼らの故郷の味をふるまってもらいながら、どうして日本にやって来たのか、どんな苦労があるのかなどを聞き出していく。子どもにも親しめる料理や飲み物を入り口にして、難民について考えることのできるノンフィクション。(安田菜津紀著・写真、ポプラ社、税抜き1400円、小学校高学年から)【翻訳家 さくまゆみこさん】

「若草物語Ⅰ&Ⅱ」

 生き生きとした登場人物が出てくるお話を読んだとき、「めでたしめでたし、はいおしまい」ではなく、彼らがその後の人生を私たちと同じように生き続けているような気持ちになる。
 主によく知られた1巻目とその続編の合本により、個性豊かな仲良し4姉妹が、成長し、それぞれの幸せを探しながら、相変わらず、人生を楽しみいつくしむ生活を続けていることを、じっくり味わえるのがうれしい。物語は続く。幸せな時間にまだまだどっぷりとつかりたい。(ルイザ・メイ・オルコット作、谷口由美子訳、講談社、税抜き1900円、小学校高学年から)【丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵さん】=朝日新聞2020年1月25日掲載