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田中達也「MINIATURE TRIP IN JAPAN」 超絶技巧の「見立て」アート

「茶取り線香」 ©Tatsuya Tanaka

 押し寄せる外国人観光客を意識してか、書店では日本の名勝などを捉えた写真集が目につく。本書も外国人を意識しているようなのだが、「日本文化を伝える」一冊としてはこちらの方が多層的で、つまり魅力的だ。

 ドラマ「ひよっこ」のオープニング映像で知られるミニチュア写真家・田中達也(1981年生まれ)が、インスタグラムで発表してきた3千点を超える作品などの中から、日本の風物に関するもの72点を選んで編まれている。

 竹輪がこいのぼりに、蚊取り線香が茶畑に、ブラシが秋の稲刈りの風景に――。添えられた小さな人形でサイズが変換され、何より見事な「見立て」によって、キュートで笑えて説得力のあるミニチュア風景になっている。

 「見立て」は日本文化の得意技の一つ。そこに超絶技巧が加わり、表現として愛されているのだから、いくつもの回路で外国人に日本を伝えることになる。もちろん、日本に暮らす我々が見ても楽しい。何べん見ても。=朝日新聞2020年2月15日掲載