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「210日ぶりに帰ってきた奇跡のネコ」 飼い主のため、奔走する探偵

 幼い頃、飼っていた猫がいつの間にか姿を消したことがあった。ずいぶん長い間、帰りを待ちわびたが結局、戻ってこなかった。今でも、スーパーで「猫、探しています」の貼り紙を見かけると、飼い主のわらにもすがるような気持ちが伝わってきて、胸が痛む。

 『210日ぶりに帰ってきた奇跡のネコ』(藤原博史著)は、「ペット探偵」がその奮闘をつづる。行方不明の現場に駆けつけて足取りに思いを巡らせ、時には物陰に潜り、排水溝をのぞき込む。泊まりがけで遠方まで捜索に出向くことも。これまでに受けた依頼は約3千件。その7割のペットを依頼者のもとに戻してきたというから驚きだ。こうしたプロに頼れない人のために、犬猫の行動パターンなど自ら探す際のヒントも紹介している。

 驚異の発見率を誇る著者でも、捜索の手がかりにしているのは、やはり目撃情報だ。世知辛い世の中ながら、あのスーパーの貼り紙は、あながち「わら」ともいえないのだ。もっと目をこらしてみよう。そんな気にもなる。(立松真文)=朝日新聞2020年3月21日掲載