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「ぐっちーさんが遺した日本経済への最終提言177」 大勢の意見とは逆を行く反骨の檄

 世の経済を揺るがす騒動が出来した時に、あの人ならどう見立てるだろうか、と頼りたくなる人がいる。「ぐっちーさん」のペンネームで知られる投資銀行家、ブロガーの著者はその一人。本書はニュース誌「アエラ」に2016年から19年まで連載されたコラム177本の集大成で、アベノミクス下での経済、政治、国際関係から地域おこし、広島カープまでを縦横無尽に切りまくる。

 最大の特徴は、大勢の意見とは逆を行く視点で、「『米中貿易戦争』などマスコミが作る虚構だ」「7~8割が反対するならその案は『仕事』になる」など、コラムタイトルを見るだけで、反骨が伝わってくる。ビジネスパーソンならリアルなデータを直視し、鋭い角度から次の利益の源を見極めろ、ということだろう。

 そんな著者は、現在進行中のコロナ禍について、どう語るだろうか。エッジの利いた分析をぜひ聞きたかったが、タイトルから分かる通り、昨年9月に病気で急逝された。

 「失敗したことをしっかり受け止め、次は失敗しないようにする、という当たり前のことが日本人は苦手」

 本書に収められた彼の檄(げき)を受け取り、立ち直りのヒントをつかむしかない。=朝日新聞2020年3月21日掲載